コバセンと植木耕助、そして転校生が教室を出て数分がたったが今でもクラス内では転校生の話題で持ち切りだった。
観 察 標 的
「あいちーん。凄い人気だね、転校生。」 「そ、そうね。」
突然友達に声をかけられ驚きつつも返事をする。
ドイツからの転校生か…。確かに面白そうよね。成績優秀で運動神経も良いらしく、財閥の令嬢だなんて噂もたってるし…。しかも綺麗でかつ可愛い顔立ちで、ルックスも二重丸…。どこをとっても完璧で帰国子女というオプションまでついた彼女に私はとても興味が沸いた。
「(次の人間観察の対象は決まりね。)」
完全に転校生が私のターゲットに決まった時、ガラリと教室の扉が開いた。
「うるせーぞー。静かにしろー」
コバセンのやる気のない声と共に三人が戻ってきた。
「コバセン。机、どこに置くんだ?」 「あーそうだな…。んじゃー小桜の席だが…。」
顎に手を当てて考えるような素振りをして教室を見渡すコバセン。その視線がこちらに来た時、私は勢いよく立ち上がった。
「はいはい!私の隣がイイです!」 「あ?森か…。じゃあそこでイイだろ。植木、あそこに机運んどけ。じゃあHR終わりー。」 「え…ちょっと、」
私の隣を指差しそう言うとコバセンは教室を出ていった。あの男…いったいどこまで適当なの…。
「あ、あの…、森…さん?」
立ち上がったまま机に手をつき呆れた目でコバセンが出て行った扉を見つめていると鈴を転がしたような澄んだ声が私の名前を呼んだ。
「あ…あぁ、小桜さん。私は森あい。あいって呼んで?宜しくね。」 「う、うん。私は小桜美柑。私も美柑って呼んで?宜しくね、あいちゃん」
そう言ってニコリと微笑み手を差し延べる美柑ちゃん。そのなんともいえない柔らかな笑顔に私は一瞬胸が高鳴ったような気がした。
「あ…やっぱり図々しかったかな…?」 「う…ううん!!全然そんな事ない。宜しくね美柑ちゃん。」
慌ててそう言って私も手を差し出し握手をするとお互い笑いあった。
本当は私の傍に居る方が観察しやすいからという不純な理由で隣の席にしてもらったけど…、この一瞬で私はもっと美柑ちゃんと仲良くなりたいという思いが溢れ出したのだった。
02話 end... (森のイメージ悪くしていたらスイマセン。)
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