べちゃり、と決していい音とは言えない音が私の耳に響き渡った。

理解不能だった。何が起きたのか、自分でも一瞬判らなかったのだ。だだ呆然と、鼻とおでこが廊下の地べたにくっついているのを味わっていると、次第に鼻がつーんとわさびを食べた時のように痛くなってきた。それでやっと私が地べたとごっつんこしているのと、脳が認識した。
周りはざわざわと騒ぎ始めて、このまま起きたら一生の恥だと直感した。でも、まあ、転んでいる所で一生の恥なのだろうけれど。
野次馬がたっくさん増えたが私は起き上がらずに、そのまま気絶したふりをしていた。と、バタバタと急いでこちらへ駆けつけてくる足音が聞こえた。

「花巻!」

名前を呼ばないでよ!恥ずかしいじゃない!と、心の中で叫んだが私の名字を呼んだ人の声が、………信じられない。そうだ、これは夢だ。痛みを感じてしまう夢があるなんて想いもしなかった、と現実逃避していたらふわりと体が宙に浮いた。
ビックリして目を開けると、私の名字を呼びながらこちらへ駆けつけてきてくれただろう相手、藤くんの顔が斜め上にあった。なにこれ、お姫さま抱っこされてる!?なんて考えた瞬間台風のように全てを巻き込み今まで見たことが無い藤くんの全力疾走(?)
思わず目を開け、悲鳴のような声を発していると藤くんは走りながらも「起きたか」と無表情とは言えないけれど、笑顔とも言えない顔を私に見せた。

「あ、あああああの!今なにし、て…っ」
「お前を保健室に運ぶんだよ。お前の額から少しだけ血がでてるし、鼻が赤くなってるぞ!真っ赤な鼻のトナカイよりも赤いぞ」
「ええええええっ!」

真っ赤なお鼻のトナカイさんより鼻が赤くなっているって、もう死んじゃいたいよ!それに、おでこから血なんてでてるって知ったら少しずつ痛くなってきちゃうの!
こんな風に叫ぶことはできないので、私は大人しくおでこと鼻を押さえる。って、藤くんにお姫さま抱っこされているまま保健室行くって変な噂流れてしまったらどうしよう!私は、そ、そりゃあ嬉しいけれど藤くんは絶対迷惑よ!


2010 10 25
みんくさまへ。企画参加有難う御座いました!
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