藤くんと大学が別々になると知った同じ高校で、同じクラスの頃。ベタだけれど体育館の裏で藤くんが私に告白をした。一言だけ、好き、と。それでも嬉しかった。嬉しさのあまり涙が出た。藤くんは、驚いたように慌てていたが、私は涙を拭こうとせずに小さく「好きです」と返した。すると藤くんも恥ずかしそうに静かに涙を流した。

高校生活は、残り二ヶ月となっていたがとても楽しかった。クリスマスに、とても綺麗なローズクォーツの指輪をくれた。すこし大き目のサイズだったけれど、私は嬉しくて嬉しくて藤くんにお礼を言った。そして私が何をあげるか悩んで、結局準備できなかったクリスマスプレゼントを藤くんに直接謝り、何がほしいと聞くと「美玖がほしい」といつもは苗字呼びなのに、真剣そうな顔でいうから、私は頷いた。

高校卒業。私は涙がボロボロとでてとまらなかった。藤くんと別の大学に行くことも、口下手な私を友達と言ってくれた子たちも、どんどん離れていくのかな、なんて考えてしまったから。そんな私の心を読み取ったように藤くんが私に駆け寄り、「俺は浮気なんかしないんだからな」と私に告白してきてくれた時のようにほんのり目に涙を溜めて笑ったから、私も「浮気なんてしたら、許しませんよ」と涙を流しつつ笑ってみた。


* * *



大学に入ってから七ヶ月経った。私は、電車で十五分。藤くんは車の送り迎えで三十分、とだいぶ遠い所へ行ってしまったから、メールも電話もあるけれど、やっぱりちょっぴり寂しい。色々事情があるから、最後に藤くんと会ったのは二ヶ月前、最後に藤くんとキスしたのはもう半年以上も前。二ヶ月前の時なんて偶然街であって、少しお話した程度だったから。

「会いたいなぁ…」

ぽつりと自然に言葉が漏れてしまうほど、私は藤くんに会いたくてたまらない。メールしてみよう、と勇気を振り絞ってなれない携帯電話をポチポチと文字を打っていたら、ピリリッと可愛げのない着信音が鳴った。誰だろうと思ってまじまじと見つめると、そこには『藤くん』と言う文字。急いで電話に出る。

「も、もしもし…」
『花巻か?』
「え、あ、う、うんっ!?」
『今日さ、今から会えるか?』

今日はまだ授業残っているけれど、

「だ、だいじょ、ぶだよっ!」

緊張しつつ返事をしてみれば、藤くんは『よかった』と言って待ち合わせ場所や時間を告げた。わかった、と噛みつつ返事をして急いでバックに色んなものを詰め込む。そして仲良くしてもらっている友達に、帰ると告げてバタバタと風のようにローズクォーツの指輪を薬指にはめつつ藤くんとの待ち合わせ場所に向かった。


20101112
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