学パロでもなんでもいい


ぽつぽつと雨が降っている。大降りにならなければいいけれど、と思った矢先にザーと耳を塞ぎたいほどの雨が一気に降ってきた。洗濯物を外に干していなくて良かった、と息を吐いて溜まりに溜まったDVDを見ようとテレビに近づいた時、ピンポーンと力強い雨の音にかき消されてしまいそうなチャイムが鳴った。

こんな雨だと言うのに、なんて考えつつ玄関に向かうと、二度目のチャイムが鳴った。私は二度目の息を吐いてガラリとどあ(とアーサーさんたちは言っている玄関の扉)を開けてみると、目の前に雨のせいで体中が濡れて今にも風邪を引いてしまいそうなアーサーさんがいた。

寒そう、とぼんやり思いつつ私はアーサーさんを部屋に通す。靴を脱いで上がっていくアーサーさんは服を着つつ海に飛び込んだ御馬鹿さんっぽくて、少し笑みが零れる。アーサーさんはそんな私の笑みには気がつかずに、びちゃびちゃと廊下を濡らしつつ部屋の前で立ち止まった。

「どうしたんですか?」

尋ねてみると、アーサーさんは「部屋まで濡れるじゃないか」と返事を返したので、私は「ではタオル持ってきますね。あ、お風呂も入りますか?沸かしてあるんです」と言うとアーサーさんは「頼む」と言って少し微笑んだ。

私はパタパタと早足でタオルを取りに向かい、冷たい廊下で待っているアーサーさんが可哀想だからと暖かいお茶を準備するため台所でやかんにお湯をいれて沸かす。沸く間に私はアーサーさんの元へ戻り、タオルを二枚渡した。

「ありがとう」

そう言って服を脱ぎ始めるアーサーさんに少し吃驚しつつも「いいえ」と言うと、アーサーさんの濡れている体を見つめた。以外にも筋肉質なアーサーさんの体は、傷跡があるもののとても綺麗だなあと半分見惚れていればアーサーさんが「さっきからピューピューってキッチンから音がするんだが」と言ったので私はそんなに見惚れてしまっていたのか、と恥ずかしくなりつつ急いで台所へ向かった。

「お茶、どうぞ」
「ん、サンキュー」

少し沸きすぎたお湯で作った熱いお茶を私のお気に入りの湯飲みで手渡せば、上半身裸なアーサーさんは嬉しそうに受け取って少しずつ飲み始めた。「アーサーさん、先ほども言いましたがお風呂沸いているので、どうぞ入ってくださいな。着替えは、この前私の家に泊まりに来たとき忘れて行ったのがありますので、それだしておきますね」「このお茶全部飲んでからな」
そんなにこの緑茶が好きなのだろうか。アーサーさんは緑茶が好き、と後でメモしておこう。と言うかちびちび飲んでいるから飲み終わるのに一体いつかかるのだろうか。少しじれったい。

「アーサーさん、早く飲み終わってください」
「えー」
「えー、じゃありません。風邪引いたらどうするんです」

私の言葉にアーサーさんはうぐっと言う顔をしてお茶を全部飲み干した。そして私に湯飲みを渡し、お風呂場へ向かっていったアーサーさんのために私は台所に湯飲みを置いて、着替えをだすために箪笥がある部屋に向かって着替えを出した。

「湯加減どうですかあ?」

お風呂場へやってきた。アーサーさんが着ていた服は泥もついていて、洗濯しないとなと考えつつ私は言うと、アーサーさんは「丁度いい」と大きめな声で言った。雨は小降りになってきていた。

テレビのある部屋には、少し大きめな炬燵(こたつ)があるから、そこで少し暖まろうと考えてすっぽり体を炬燵にいれる。暖かすぎて眠くなってくるなあ、なんて考えた後意識が途切れた。


目が薄っすらとしか明かなかった。ぼやける視界の中、記憶がぐるぐると混ざって気持ち悪いと思いつつさっきまで何があったのかを一生懸命思い出していると、アーサーさんが家に来ていたんだった!と十秒ほどで思い出し、急いで顔を上げると私と同じように体をすっぽり炬燵にいれてぬくぬくしているアーサーさんがいた。

「あ、あーさーさん…」
「起きたか、菊。おはよう」
「え、あ、お早う御座います…」

どうやら私が眠ってしまっていたことは気にしてないらしい、彼らしい無邪気な笑顔で「良く眠っていたぞ」と言った。素直に恥ずかしい。

「それと、」
「それと?」
「雨、止んだみたいだ」

い、いつのまに…。と窓を見てみると、太陽の光がきらきら輝いていた。アーサーさんのような色だと思った。

20101103
Aコース
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -