二階で洗濯物をたたんでいると、歌声が聞こえた。
 藤くんと私である真っ白で綺麗な一軒家にはお客さんも来ていないので二人ぼっちなはずなのに、綺麗なメゾアルトを奏でる声が耳に響き渡る。
 CDの声かな?と一回考えてみたりもしたが、なんか違う。気になった私は、たたみかけの洗濯物を放置してこっそり一階にいる藤くんにバレないよう、忍者のごとく部屋をでて一階へ降りる階段を下りる。
 歌声はリビングから聞こえてくるので、一番難解なリビングへ続くドアを開けようとバックンバックン煩い心臓を左手で抑えつつも、ゆっくりと右手でドアノブをつかんでドアを押した。
 がちゃりと小さく音がして、バクンッと胸が一瞬だけ止まったような気がしつつも手汗を沢山かいてた右手をドアノブから離す。
そして、唖然とした。あいた口が塞がらない、とはまさにこのことだと思いつつ、ソファにボスンと座りつつ楽しげに歌を歌っている藤くんを見つめる。と、藤くんは視線で気がついたのか不意に目線を私の方向をかえ、吃驚したように口をパクパク動かして顔を真っ赤にした。

「う、歌声…素敵です、ね…」

 目線があったままの沈黙が耐えられなかったので誤魔化すように言ってみれば、藤くんはこの世の御仕舞いと言う顔を一瞬だけして、顔を両手で隠した。

「聞かなかったことにしてくれ…っ」

 今の藤くんはとっても可愛らしい、と耳まで真っ赤にさせている彼に微笑みをしつつも「はい」と言ってみれば、顔をバッとあげてまだ熱を持っている自分の頬に両手をつけながらも本当か?と尋ねてきた。

「本当です、よ」

 にこやかな笑みをできているかわからないが藤くんは飽きれるような意味ではない(そんな気がしなくもない)ため息を吐いた。

「信じる」
「あ、ありがとうございま、す…?」

 お礼を言うべきか否か悩みつつ言ってみれば、藤くんはなんだそりゃと言って面白そうに笑った。

2010 10 25
途切れたラブソング
===
コピ本にしようと思った同棲パロディシリーズ短篇
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -