好きな人はいるの?
家に遊びに来たNはわたしのポケモンと楽しそうに会話していたから、とり残されたわたしがムッスーとした顔で問いかけてみればビックリしたように噎せはじめたNに、いるのかあと直感してしまう自分がいる。わたしの胸がちくりと針につつかれている感覚を味わいながらも、にっこりと笑って「どんな子?」と聞いてみれば「わからない」と口を押さえてもう噎せない、と言う格好をしつつNは答えた。

「わからないって、ことはないじゃない」
「でも、わからないんだ」

どうしたのだろう。元々頭が悪い子だってわかってはいたが、重症なのかもしれない。失恋したばかりのはずと言うのに、不思議と辛くはなく寧ろスッキリしていた。

「わたしが、協力してあげるわ。まったく…焦らしい」

ふうと二酸化炭素を吐いて簡単にでてきた言葉に自身めビックリしたが、すぐにわたしが吐いた二酸化炭素とともに消えた。もしかしたらわたしの前世はこの子のお母さんなのかもしれない、と少し考えてしまうほどお節介だけどNは嬉しそうに笑って、アリガトウと言った。つい最近まではこんな笑い方しなかったのに、と思ったわたしは本当にお母さんなのかもしれない。
わたしはチェレンのお母さんから貰った丁寧に母が皮とスジを取ってくれた晩白柚がのった皿を見つめ、一つとって食べてみる。酸っぱかったし、甘かったけど少しだけ切ない味がした。


20101023
初恋は晩白柚の味

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