「イジワルー!」
「意地悪じゃないよ」

 俺のベットで眠っていたかと思えば急に目をぱっちり開けた一言がこれだ。冷静に言って見るとじたばたと暴れながら、何が意地悪なのか分からないままぶわっと涙を流し始めるN。に、はあとため息をつきながら僕はNの頭をそっと撫でた。Nは帽子を被っているから、髪の毛の感触なんて分からない。あ、僕もか。

「…むう………」

 うるうると瞳に涙をいっぱいためながらしゃっくりをあげ始めるN。これで上目遣いだったら…なんて想像していると下ネタ的なことになりそうだから、我慢。

「何が意地悪だったんだ?」
「………キミが、ボクの楽しみにしていた、ケーキ、を食べたんだ。キミの分はまだ残っていて、チョコレートケーキと、チーズケーキ…一人で食べてて、ずるい、って言ったら…」

 しゃっくりまじりの、少しかれた声で、なんとまあくだらない夢を見たんだろうか。言葉を続けようとするNに、僕は頬をぺちっと叩いて馬鹿と言った。

「ば、バカじゃないもん!」
「お前は馬鹿だ」
「…ひどいよぅ………」

 また泣きはじめるNに、もう一回ため息。

「ケーキぐらいいくらでも買ってやる。食わしてやる」
「…………ほ、んと…?」
「ああ、ほんとだ」

 すると急に目を光らせて頬にくっつけたまんまの俺の手を、がしりとつかんでNはニッコリ微笑み「ありがとう」と言った。涙はまだ枯れていないが、今まで一番なNの笑顔だと思った。…そんなにケーキが好きなんだろうか、少し嫉妬してしまう。



2010 10 05
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -