「シズちゃーん!」 ぎゅーっ、と後ろから抱き着いてくる臨也に静雄は少しだけ体を揺らし、ゆっくりと振り返る。当たり前だが臨也がいた。にこにこと人懐こい笑顔を見せて可憐に微笑んでいる臨也が、そこにいた。 静雄はゆっくりはあ、と息を吐いて無表情で臨也をみつめる。臨也はそんな静雄の冷たい目線でもドキドキと胸を鳴らして、きゃーっ!だの、生きてて良かったー!だのと叫んでいる。 そんな臨也が苦手だった。 それだけのことだった。 静雄と臨也が出会ったのは高校一年生の時。今考えてみればそこから臨也は静雄への熱い愛情表現をしていたと思う。 静雄がバケモノ、と皆に言いふらしてみたり。 ナイフで静雄を傷つけてみたり。 池袋にて命をかけた鬼ごっこをしてみたり。 と、どれも静雄内の臨也株が急落するようなことをし続けた結果、臨也は考え付いた。 『シズちゃんが痛い思いをするのは駄目だ!もっと優しく、俺がシズちゃんを触りまくれる方法は…。はっ!これだ!』 ハグ。 抱き合うのだ。抱き合う、と言っても臨也が一方的に抱きつく。と言うのが正しいが、当の本人は静雄に抱きつけられるならば、なんでもよいらしい。 静雄はとても迷惑しているが、何度殴っても蹴っても自動販売機を投げてもナイフをへし折ろうとも、やめる気をみせない臨也に諦めたらしく、今ではもう気にしていないらしい。 臨也が好きなのか、もう全て諦めたのかはわからないままだが、臨也はどうでもよかった。 抱きついて抱きついて抱きついて抱きしめて2010 08 21 実は両片想い!なつもり。 |