「え、先輩。今日、誕生日だったんスか?」

首を傾げながら言ってきた赤也は、俺が頷くと、うわあああと慌ててバッグを漁った。
なにをしているの?と視線で言ってみるが、赤也はなにかに必死で気がつく様子はない。数分して、ようやく見つけたのか、テレレテッテレーとネズミが大嫌いなネコ型ロボットが自分のポケットからなにかを出したときの効果音を、赤也は自分で言い、上に掲げた。

「新発売、抹茶と苺入り贅沢メロンパンー」

なんじゃそれ。と思いながら赤也の手先にあるパンを見つめた。抹茶と苺なんて合うのかわからんし、合ったとしてもメロンパンの原型がなくなってしまっているかと思うのだが。食べたことがない魅惑の味を想像して、どうしても食して見たくなった。

「くれんの?」
「モチのロンっス」

どぞ、と言ってそいつを差し出してきた赤也に礼を言わず受け取り、早速開けてみた。むわりと香りが漂ってくる。これは苺メロンパンの香りだ。抹茶な色をしているのに、匂いはしない。あぐりと頬張るように大きめな一口で食べてみると、甘さのほかに苦味を感じた。美味しいのか、美味しくないのかよくわからない味である。

「どうっスか?」
「まあまあ」
「いちおー俺の昼飯だったんスけど…そんな反応辛いっス」
「くれたのはお前だろぃ。あ、放課後、ラーメンでも寿司でもいいから奢れよな。お前の菓子パンチョイスは少し変だから、コンビニは駄目だ」
「………そんなことないと思うんすけど。まあ、先輩の誕生日だから」

それを聞いてニヤリと笑った俺は、

「お前の今月の小遣い、0になるかもな」
「それだけは勘弁」







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