「毛利元就か。いい名前だな」 「なんぞ、急に」 にへらと笑いながら眼帯をつけ直した元親が、元就にとって気持ち悪いとしか思えない存在に見えた。 鶴姫を探さないといけないのだが、どうやら元親は探すのを拒んでいるように、元就には巨人のようにみえる体格で邪魔をする。その前に、道がわからないのだが。 「何がしたい」 イライライライラ、と眉を寄せて訊ねる元就に元親は答えずしばらく躊躇ったあとに元就を担いだ。 なにをする、と叫んで暴れる元就を無視して、スタスタとどこかへ向かう元親は、真面目そうな顔をしていた。元就からはみえないが、なにかを決心したようだった。そして、そのまま――― *** 鶴姫は呆然としていた。茶色い髪の毛を後ろは腰より下に伸ばしたものを結んでおり、前はぴょんぴょん跳ねた寝癖のようにもみえる髪型をしている者と、両頬と鼻に緑のペイントをしたどこか面倒臭いと言う目をしている青年が、鶴姫の前に佇んでいる。 「え、えっと…何のご用でしょうか…?」 頬にたらりと汗をかきながら訊ねた鶴姫に、まるでワンコのような者が答える。 「困っておられるようなので、助けようと思った次第で御座る」 まるで武士のような口調に懐かしさを覚えながらも、鶴姫は、 「だ、大丈夫です!私なら、一人でも…」 「いやいや、明らかに迷子でしょ、君。そんな今時珍しい格好してるし」 「これは間違えちゃったんです!ちゃんと偵察してなかったか、ら…」 あ、やばい。そんな気がして二人をちらりとみると、ワンコのような者が勢い良く鶴姫の両手を握った。 「やはりか!!!」 「ふえっ?!」 とてつもなく大きな声で、周りにいた人も振り返ったりしている。それを気にしていないといわんばかりに、者は鶴姫の片方の手を掴んだまま走り出した。 「あ、あの?ちょっと!」 鶴姫が話しかけるが、者は無視をする。というより、周りの雑音のせいで気がついていないようだ。 20110414 |