デリ雄、とサイケに呼ばれたから振り返ってみた。ニコニコと笑っているサイケは、なんだか憎たらしい。むにり、と両頬をつねってみたが、なにをしているの?と不思議そうな顔で俺を見つめた。

「津軽は?」

ぱ、と手を離して訊ねると、寝ているよと返事が来た。なんかサイケと二人きり(二体きり?)なのは久しぶりだ。同じサイケデリックなのに、俺はサイケのように幅広く歌えない。それが悔しくて、最初は話しかけられても無視していた。なんて懐かしい記憶が蘇る。しばらく呆けていると、サイケが不安そうに俺の頬を力強く叩いた。まあ、痛みはなく、システムがエラーか確認する文字が目の前に浮き出てくるだけなのだが。

「だいじょうぶ?バグ?」

不安そうに訊ねてきたから、違うと首を横に振る。

「なら、いいんだけど。………。デリック、キスしよ?」
「なに?急に」
「いいから」

キスなんて、人間が味わうような暖かさも、なにもないのにサイケは求める。俺には意味不明なのだが。

「津軽とすれば?」
「つがる、寝ているもん」
「じゃあ、リンダ」
「学園天国とイチャイチャしてるよ」

ぷくり、と頬を膨らませて少し怒ったように答えるサイケが幼く見える。

「いいからっ、」

強引に俺の服を引っ張って、キスをしてきたサイケ。なにも感じず、無情でキスが終わるのを待つ。


20110413


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