ボクの元へ来たゾロアはゾロアークに進化した。今でも傍にいてくれるこの子は、ほかのポケモンよりもボクの心を知っていた。
ゲーチスに呼び出され、されるがままにセックスをして部屋へ戻ってくるといつもちょこんとドアの前にいて「おかえり」と素っ気無く言ってくる。それがボクにはとてもありたがい。
ただいま、と返事をして少ししわが増えたワイシャツを脱いでいるとゾロアークがすり、と甘えてきた。

「今日も一緒に寝る?」
(Nがそう言うなら)
「相変わらずキミは素直じゃないね」

くすくす笑って言えばゾロアークは煩い、と恥ずかしそうに言ってそっぽを向いたからあと一つボタンを外したら脱げるワイシャツのことを一時放棄して、ゾロアークに抱きついた。

「ありがとう」

返事は無いけれど、大人しく瞳を閉じたゾロアークに笑みがこぼれた。そしてゆっくり離れてワイシャツの最後のボタンを外した。Tシャツを着て、ワイシャツを地べたに放って置いて、そして瞳を開けたゾロアークと一緒にベットへ向かい、横になった。


* * * *


「お前なんか要らない」

どかどかと蹴られる。イタイ、そう叫びたいのに声は出ないで変わりに涙がでてきた。どうしてこんなことするの?と心の中で考えても何も思い浮かばなくて、自分は本当に要らないんじゃないのだろうか。という決定的な答えが出てきた。

「いらない」「いらない」「いらない」

声が三つになった。かと思えば、声は五つ、九つ、十を超えたところで何人が自分をいらないと言っているのか考えるのをやめた。
謝れば許してくれるのだろうか。また、自分を求めてくれるのだろうか。わからない。
自分は、震える体を頑張って起こそうとしたのだがげしっと蹴りが腹に直撃してべたりと地べたに倒れた。

「ごめんなさい。ゆるしてください」

掠れる声で叫んでみる。「いらない」「いらない」声は収まらない。もう一度ごめんなさい、と小さく言ってみる。「鳴くな、けがわらしい」「いらない」「いらない」「いらない」ごめんなさい「鳴くな」ごめんなさい「うるさい」「いらない」ごめんなさい「ニンゲンに使われるための道具のくせに」「いらない」ごめんなさい「お前なんて、いらない」



目が覚めた。わけが判らない夢だった、と素直に思い頭を掻き毟る。「トウヤー!」姉さんの声がする。ああ、ここは家か。早く姉さんと母さんのところに行かないと、姉さんに怒られるなあとのんびり考えながらあの夢はなんだったのか、と考えながら僕は服を着替えて一階に降りた。

「おそい!」

姉さんは案の定怒った。そんなに怒らなくてもいいと思う僕は、素直に謝ってみるが心を込めて言ったわけではないのでそこが気に入らなかったらしい姉さんは、僕の頭を持っていたおたまでゴンッと軽く叩いた。
イテッ、と反射的に言ってみるけれど実際にはそんな痛くは無くそれを知っている姉さんと母さんは大丈夫?と言わずに朝食を盛り付けていた。
僕はため息をついて椅子に座って、テレビをつける。流れてくる番組は、今日の天気だとかポケモン特集とか、ポケモンはやっぱり人気だし、テレビにでているポケモンたちは皆幸せそうだ。ぼへーとしつつ見ていると、家のチャイムがなった。「トウヤ、でてちょうだい!」母さんのかわりに姉さんが言った。
めんどうだ、と思いつつはーいと愛想よくドアを開けてみれば、そこにはゾロアークとNがいた。




20101022
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