チェレンとベルは、僕がNと言う人物に恋をしていることを知っていた。
自分からは言っていないのだが、当たり前のように二人は「Nさんのこと、好きなんでしょう?」と言ったのだ。僕は否定せずに頷いてみれば二人はやっぱり、と笑った。僕が同性愛者と言うことはどうでもいいらしくて、応援するよ!とベルははりきり、チェレンは「しょうがないな」と苦笑して色々作戦を練ってくれた。
僕は不器用なほうだから、二人の支援はとてもありたがかった。双子の姉であるトウコも応援してくれるようだ。弟が同性愛者ということは気にならないわけではなさそうだが、「トウヤが好きなんだもんね、わたしも好きになっちゃうかもなあ」とおどけて言ってきたりもした。

ある日、目の前にN(いつも心の中では呼び捨てだ)がやってきた。にっこりと微笑んで挨拶してくれたのだが、緊張のあまり笑みを返せなかった。Nはそのせいなのだろうか急に表情を変えた。
そして視線をボクの足元に移す。戦闘のせいで薄汚れてしまったポカブをモンスターボールからだして洗おうとしていたところだったから、そんなポカブのことが気になるのだろか?と思いつつ見つめていると、Nは小さく苦しそうに笑った。
そして、Nの口からあんなことを言われるとは微塵にも思っていなかった言葉を僕に向けられて言われ、一瞬だけ頭が真っ白になった。すぐに我に返ったが急なことで、心の中で混乱しているとNは小さく別れの挨拶をして、何処かへ行ってしまった。
追いかける暇なんてなかった。Nの背中がとても小さくなっても、僕は見つめ続けた。どうしてあんなことを言ったのだろう、どうして僕は返事をできなかったのだろう。胸がチクリと軽く痛み出して、心臓の中に暴れ狂うモンスターがいるような苦しさに襲われた。



2010 10 18

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