「あ、悟浄先輩。」
「あ、no nameじゃん。」
悟浄先輩は遠くからでもすぐ分かる。
こんな目立つ赤色の頭は学内で先輩以外いないし。
「今帰り?」
「はい。先輩も?」
「じゃ、これからいい男と放課後デートはどうよ?」
「いい男なんてどこにいるんですかー。」
私はわざとらしくキョロキョロと周りを見渡す。
これはもう毎回の定番のやり取りだった。
「毎回思うんだけど、なんで俺にはあの体質発動しねーの?」
「うーん、だって先輩のこのやり取りは挨拶、というか、社交辞令というか、本気じゃないですもん。」
「女性を口説くときはいつでも本気だぜ?」
てか俺、意識されてないのかよ、と大げさにうなだれる。
そんなやり取りをしつつ正門を出て駅へ続く道を歩く。
先輩はさりげなく車道側を歩いてくれる。
「やっぱいいですね。」
「何が?」
「先輩くらいですよ、体質のこと気にせずに話せる人。お兄ちゃんみたい。」
先輩はニヤっと笑って私の頭を乱暴にぐしゃぐしゃ撫でた。
力が強いから自然と下を向いてしまうが、上から
「なんかあったら相談のってやる。」
って言葉をかけてくれる先輩をやっぱり私のお兄ちゃんに欲しいと思った。
意識されない悟浄
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