頼りない足をどうにか動かして、家のドアまで辿り着く。
バックの中を漁り、鍵を探すのが億劫だ。
今日は久々の飲み会で、少し飲み過ぎてしまった。
三蔵には遅くなると伝えているから、もう寝てしまっているかもしれない。
ようやく鍵が見つかった。
そっとドアを開けると、リビングから明かりがもれている。
消し忘れだろうか。珍しい。
バッグを床に置き靴を脱ごうと屈むと、ぐらりと体が揺れ、思わぬ方向に体が傾いた。
まだ酔いが抜け切れていなかったらしい。
全身への衝撃を覚悟してぎゅっと目をつぶる。
しかし、想像していた衝撃はなく、かわりに心地よい熱にぽすりとおさまった。
ゆるりと顔を上げると、薄暗い玄関で柔らかく光を反射する金色が見える。
「さんぞーだー。」
「…酒くせえ。」
きっと眉間には深い皺が刻まれているんだろうなぁ、と想像したらなんだが面白く思えて笑いが止まらない。
私って笑い上戸だったらしい。
なかなか収まらない笑いをそのままに、ずるずると引きずられるようにしてソファまで運ばれる。
乱暴なんだか、優しいんだか分からない。
そこが三蔵らしいのだけれども。
水の入ったコップを渡されてようやく笑いが収まった。
コップに口をつけて一気に飲み干す。
程よく冷えた水が体の熱を奪い、頭が少しすっきりしたような気がする。
口の端からあふれた水を三蔵が指で器用に拭う。
いつもは私が三蔵をお世話する立場なのに。
立場が逆転したみたいだったが、不思議と嫌な気はしない。
むしろ、心地よささえ感じていた。
「帰んの、遅せえよ。」
ボソッと呟かれた言葉を耳が拾う。
三蔵、私を心配してくれてたんだね。
「嬉しい。さんぞーかかわいなぁ。」
思わず、本音が口から出てしまう。
酔っていなければ決して言わないようなことだ。
三蔵、かわいいって言うと怒るから。
しかし、言った後で後悔する。
怒った、かな。
それとも呆れてる?
三蔵の反応を見るまでの勇気がなくて、目の前にある三蔵の腰に抱きついた。
こうすれば三蔵の顔は見えない。
はがされるかな、と身構え腕にぎゅっと力をこめる。
酔っ払いの力なのでたかが知れているかもしれないが。
だが、意外にも三蔵は逆に私を抱き寄せてもっと抱きつきやすい体勢になった。
触れ合う面積が増えて動物特有の温もりを全身で感じる。
顔を埋めると、嗅ぎ慣れた柔軟剤の香りと三蔵の匂いが鼻をくすぐった。
暖かくて、まどろんでしまう。
たぶん、きっと、これはアルコールのせい。
睡魔が私を眠りの淵まで引きずろうとしていた。
だから私は、これは酔っているせいだ、と心の中で言い訳してそのまま身を任せた。
なつくとたのもしいそんざいです
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