三蔵を飼い初めてから私のプライベートは三蔵中心に回っている。

仕事が休みの今日は三蔵にワクチンを接種してもらう予定だ。
動物病院とか初めて行くから緊張するな。

「三蔵くんと三蔵くんの保護者様ー、診察室へどうぞ。」
「はい。」

「はじめまして。擬人化動物専門医の猪八戒と言います。」
「よろしくお願いします。」

診察、ワクチンは滞りなく進んだ。
優しそうな先生でよかった。
三蔵も、先生には反抗しない方がいいと判断したのか大人しかったし。

待合室で会計を待っていると、足元にオモチャのボールが転がってきた。
そして、それを追いかけて一匹のぶち猫が私の足めがけて突っ込んでくる。
ボールに夢中になってるんだ、かわいい。

「おねーサンごめんな、こいつうちの猫の悟空っつーんだけど。」
赤い髪が印象的な男の人が悟空くんをひょいと持ち上げて、私の隣で伏せていた三蔵の横に座る。

悟浄さん、というらしい。
三蔵は毛を逆立てて悟浄さんを威嚇している。
話しやすくていい人そうだと思うんだけどな。

「あれ、もしかして警戒されてる?俺、女の子には結構なつかれる方なんだけど。」
「あ、この子男の子なんです。ね、三蔵。」
不機嫌な三蔵がさらに不機嫌になる。
三蔵に話を振るとふんと鼻をならした。

三蔵は悟浄さんは苦手らしいけど、悟空くんにはなつかれたみたいだ。
三蔵も満更ではなく、じゃれてくる悟空くんを軽くいなしてるけど、邪険にはしていない。
受付で名前を呼ばれるまで三蔵と悟空くんを見守りつつ、悟浄さんと雑談をした。


動物病院から帰って、リビングのソファーに座ると三蔵が太ももに頭を乗せてくる。
「三蔵、今日は友達できてよかったね。」
「友達じゃねぇ。」
三蔵はめんどくさそうに答えるが、照れ隠しだと思う。

「そう?でも、ずっと家で飼ってるから私以外と接点がないのはつまらないんじゃないかと思って。」
「飼い猫はそんなもんだろう。」
三蔵が答えながら身じろぎをして、きれいな金糸の髪がはらりと太ももにおちる。

「それに、家から出るのは好きじゃねぇ。no nameに変な匂いがつく。」

……。
うん、わかってる。
猫は自分のテリトリー内の物に自分の匂いがついてないと、落ち着かないんだよね。
つまりは、三蔵に所有物扱いされてるわけなんだけど。

でも、でも、いきなりこんな甘えられた状態でそんなこと言われたらドキドキする。
ほんのり赤くなった顔を見られないように三蔵の頭を少し強めに撫でた。


きちんとききかんりをしましょう


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