最近猫を飼いはじめた。
家の前でぐったりしているところを保護して、元気になる頃にはすっかり情が移ってしまっていたのだ。
わがままで高貴な猫だが、前足で顔を洗うしぐさなんかを見てると癒されるし、素直にかわいいと思う。

「三蔵ー、ご飯だよ。」

名前は三蔵にした。
私が「三蔵」って呼び掛けると機嫌がいい時には「にゃあ」って返ってくるということはこの子も気に入っているのだろう。

三蔵は女王様みたいな性格をしていて、今も三蔵は私のお気に入りのソファーを一匹で我が物顔で占領している。
まぁ、そんなところも愛らしいのだけれども。
最近私はこのソファーに座れていなくて、だいたいソファーの横のフローリングにクッションを敷いて座っている。
端から見ると三蔵がお嬢様で私はその従者みたいだ。

にゃーお、と三蔵がソファー降りて私の膝の上に乗ってきた。
部屋が寒いので私で暖をとろう、ということらしい。
どうやらここで寝るようだ。

三蔵は、滅多に体を撫でさせてくれない。
保護初日に撫でようと思ったら軽く噛まれたのはいい思い出だ。
これは凄く珍しい。この機会を逃しちゃいけないだろう。

三蔵の体に手を滑らすと、毛並みがとてもいいので、撫でると気持ちいい。
少し調子に乗ってそっと顎の下をくすぐってみる。
すると気持ちいいのか、目を細めて手に甘えてくる。
か、かわいいっ!
初めて三蔵がなついてくれたような態度をとったので、嬉しくなってしまって、私は思わず額に唇をおとした。



ずしっ、と突然私の膝に成人男性の体重がかかり、目の前にある整った顔と目が合う。
「は…えっ…?!」

混乱する私にその人は煩い、と文句をいいつつ膝の上から退いてくれた。

え、なんで急に男の人が現れた?あれ、三蔵は?
「えと…どちら様、ですか?」
訳の分からない状況に私は後退りをしながら問う。

「…お前が三蔵と呼んでる猫だ。」

驚きのあまり思わず声にならない声をだしてしまった。

…そういえば、動物のなかには擬人化できる個体もあるんだっけ。
三蔵の場合は額にキスがきっかけらしい。
ペット、飼ったことないからよくわからないけど。

「おい。本当に俺の一生を世話する覚悟、あるんだろうな?」
「は、はい。もちろん、です。」
三蔵が真剣な目で私を見つめて問うので、私は反射的にそう答えてしまう。
…こうゆうことを聞いてくるってことは私を主人だと認識してくれてるのかな。
そうだと嬉しい。



三蔵はいつものように私のお気に入りのソファーを独占している…人間の姿で。
私は勿論ソファーの横、フローリングだ。
「おい」、とふいに三蔵から声を掛けられて思わずびくっと反応してしまう。
一人暮らしが長かったせいか、部屋に自分以外が居るということに慣れない。
三蔵から茶を出せと言われて、キッチンに向かった。
…これじゃあどちらが主人かわからない。



じぶんをしゅじんだとにんしきさせましょう


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