no nameの前で人間化したのは三蔵の意図することではなかった。
更に言うならば、飼われるつもりもなかった。
自分の特異な性質を理解していたからこそ、できるだけ人間に触れられないように生きてきた つもりだ。

だからなのか、no nameの指が弱って冷えた三蔵の体に触れたときその恒温動物特有の暖かさに 驚いた。
思わず噛みついてしまうほどに。

噛みついたあともno nameは甲斐甲斐しく三蔵を看病したが、三蔵には極力触れてこない。
当然だろう、噛みつかれたのだから。

わざとno nameが触りやすい位置に座ったりもしたが、何を勘違いしたのかその座り心地のよい 場所を三蔵に譲りno nameはその下、硬い床の上 に座る。
そうじゃない、と伝える手段がないためにその勘違いを正しようがなかった。

しかし、この状況なら三蔵の特異な性質が no nameにばれることなく回復できる。
三蔵にとってよいことのはずだが、なぜか落ち着かない。

完全に回復したらどうにかして外へ出よう。
それでno nameとはもう会うことはない。
恩義などは感じていなかった。
no nameが勝手に手当てをしたに過ぎない、というのが三蔵の言い分だ。

だが、そうなるとあの温もりにももう触れることはない。
それはなんだか惜しく思えた。
それに、体はだいぶ回復したが心なしかまだ寒い。
体の芯から冷えている気がする。

ちらりとno nameの様子を窺いつつ、三蔵は no nameの膝にのった。
ああ、この体温だと妙な安心感を覚えた三蔵は 眠る体勢に入る。 戸惑いを含みながらもゆっくりと撫でる手の温もりを感じながら心地よい眠気に意識を預けた。

眠りに落ちる寸前、ふと三蔵の周りの空気が動いたかと思えば、額に温かく、柔らかなものが額に押し付けられる。
その感触と同時に三蔵は人間化してしまった。

下に轢いてるno nameは当然のことながら混乱している。
取り敢えず、膝から退いてno nameに向き直った。

三蔵も、知られてしまったという思いで頭が占められ、冷静を装うが実際頭は真っ白だ。
混乱する頭で、思わず三蔵自身も意外な言葉が口をつく。

「おい。本当に俺の一生を世話する覚悟、あるんだろうな?」

まるで、no nameが自分を飼うこと前提の問いではないか。
心のどこかにあったここに残りたいという気持ちが、するりと三蔵の喉から出たようだった。

言ってしまったことは取り返しがつかない。
素直に自分の気持ちを認め、no nameを見つめた。


リビングは気まずい沈黙が支配している。
耳を澄ますまでもなく外の騒音が聞こえてきそうだ。
すっかり慣れ親しんだソファに体を預けて、少しでも心を落ち着かせた。
「おい」と傍で縮こまっているno nameに声をかけると、肩がびくりと跳ねる。
そんな反応が気に入らなくて、適当な雑用を no nameに言いつけた。

さて、ここからどうやって関係を修復しようか。


じぶんはぺっとだとじかくしましょう


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