「三蔵、ちょっと聞きたいんだけど…。」
いずまいを正して三蔵に向きなおる。
前々から引っ掛かっていた。
三蔵が私の名前を呼んでくれない。
三蔵をお世話しはじめてだいぶ三蔵は私になついてくれた、と思う。
たぶん。自惚れてなければ。
でも、だからこそ、いつまでも「おい」だとか「お前」じゃ嫌だ。
私にはno nameっていう名前がちゃんとあるんだから。
でも、もし拒否されたら、名前で呼んでくれなかったら、立ち直れないかも。
「なんだ。早くしろ。」
「あの、ね。なんで、名前、呼んでくれないの。」
「…お前は俺に名前を教えたか?」
え、私、三蔵に名前教えてなかったっけ?
…ぐったりした猫を見つけて、看病して、流れで飼うことになって…。
三蔵との出会いから飼うまで、飼ってからを思い返してみる。
そういえば、名乗ってなかった。
さらに、私は自分の名前を第一人称に使わない。
出会って半年たつのに知らないことあるんだね。
「no name、no nameっていうの。」
「そうか。」
「…。呼んで、くれないの?」
「気が向いたら呼んでやる。」
むりにいうことをきかせようとしてはいけません
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