冷蔵庫から目当てのビンを取り出す。
ルビーみたいな透明感のある液体が中で揺れた。
「それがno nameちゃんの言ってたお酒?」
「はい。結構度数が強いけど、美味しいらしいんです。」
雅臣さんが食器棚からコップを取りだしながら、興味深げに聞いてくる。
今日の夕食は珍しく雅臣さんとふたりきりだった。
雅臣さんとは甘党仲間で、どこのケーキが美味しいだとか、あそこシュークリームは皮がどうだのとよく話す。
今日もスイーツ談話で盛り上がり、話題は甘いお酒の話になった。
「あまりお酒は飲まないんですけど、甘いお酒だとついつい飲んじゃいます。」
「そうそう。僕、果実酒とか好きなんだよね。」
そこでふと、家に友達から美味しいと勧められた果実酒があることを思い出す。
甘いお酒が好きだというし、二人で晩酌もいいかもしれない。
「いいね。美味しそう。」
「飲みましょうか。」
……どうしてこうなった。
「no nameちゃんはどうしてそんなにかわいいのかな?僕は皆目見当がつかないよ。」
口調はいつものまま、しかし言ってることは完全に口説き文句の雅臣さんが私ににこにこと微笑みかける。
「雅臣さん、酔ってますよね?」
「うん?どうしたの。」
そういえば、侑介くんが「雅にぃはお酒飲ませるとヤバい」みたいなことを言っていたと今さらながら思い出す。
こうゆう意味だったのか。
「no nameちゃん。キス、しようか。」
「!?」
グラスに口を付け、赤い液体を口内に含んだときにそう言われ、戸惑いの言葉も紡げないまま、雅臣さんに唇を奪われる。
慌ててのみ込んだものの、キスの味はこの果実酒の味がした。
「お酒の味がするね。僕酔っちゃったかも。」
いや、キスする前からおもいっきり酔ってましたよ。
なんて突っ込みは雅臣さんには聞こえてないに違いない。
お酒
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