誕生日は良い肉の日


「今日って三蔵の誕生日なんだよな!」
悟空が目をキラキラさせて言う。
もし、悟空に犬のしっぽがついていたら千切れんばかりに振っているに違いない。

「ってことは…肉の日だーー!」
そっちかい。
みんな野宿が4日も続いて元気がないため誰も悟空に突っ込もうとしない。
なんで悟空はあんな元気なの?

「なあなあ、もうすぐ次の町つくんだよな?今日の飯は焼き肉にしよーぜ!」
にくにくーと今にも歌い出しそうだ。
まぁ、三蔵がなにも言わないということは焼き肉決定なんだろう。



「ふー、食った食った!」
「ここの焼肉屋はなかなか品揃えが良かったですね。」
「八戒はよく分かんないのばっか食ってたよな。」
「よく分かんないのってハツとかジャバラのこと?」
「そうそう!no name物知りだな。」
宿への帰り道、いつものようにがやがや騒ぎつつ歩く。
でも、今日はなんだか三蔵が静かだ。
いつもならここら辺でうるせぇってハリセンを取り出すはずなのに。
かすかな違和感を覚えつつ、宿に着いた私たちはそれぞれの部屋に向かう。

部屋でゆっくりくつろいでいると、三蔵が訪ねてきた。
どうしたんだろう、珍しい。
若干不機嫌な様子なのも気になる。
何か粗祖したっけ?

「おい、今日はなんの日だ?」
三蔵が前置きなしに私に問いかける。
「え、良い肉の日?」
だから今日焼き肉食べたんだよね、というと三蔵の目が私を睨む。
「あ、三蔵の誕生日、です。」
「分かってるなら言う言葉があるだろ。」
三蔵はそう言うけど、乾杯するときにみんなで祝ったはず。

「違う。 野郎の言葉じゃなくてno nameの言葉で祝ってほしいんだよ。」
むすっとした顔で言う三蔵をかわいいと思ってしまうのは致し方ない。

綺麗な紫の目を見つめ返し、口を開く。
三蔵に出会えたことに対する感謝の思いを精一杯こめてあの言葉を言おう。

「誕生日おめでとう。そして、生まれてきてくれてありがとう。」


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