髪を弄られる


三蔵一行と一緒に旅をするようになってから、髪を高い位置でひとつに結ぶのはもう習慣になっている。
これなら戦闘時にも邪魔にならないからだ。

今日も例に漏れず髪を結おうとすると、悟浄が私のクシと髪ゴムを奪って、「 それ、やらせてくんない? 」といった。


男の人に髪を触ってもらうことはあまりないから、少し緊張する。
時折悟浄の指が地肌を掠めてくすぐったい。

「no nameの髪、サラサラだなー。」
「悟浄の髪もあんまり傷んでなくて綺麗じゃん。」

「 今度は悟浄の髪弄っていーい? 」なんてじゃれてるうちに終わったようだ。
悟浄が「どうよ?」といって手鏡を渡してくれた。


「かわいい…。」
と思わずつぶやいてしまった。
いつも、私は飾り付の髪ゴムとか可愛いものは持ってなくて、髪ゴムだけで髪を結っている。

けど、手鏡越しに淡い色のレース生地のシュシュがみえる。私好みの色、ボリュームだ。

「俺からプレゼント。」
「ありがと…。嬉しい。」
「こうゆうもん似合うとは思ってたけど想像以上だな。」

でも、どうしてプレゼントなんかしてくれたんだろう。そう思って聞くと

「今日、バレンタインデーなんだぜ?」
「え、チョコ渡すね日じゃないの?」
「俺は製菓会社の策略には乗らねーの。西のほうでは男が女にプレゼントをする日らしいぜ?」

「ホワイトデー、期待してる。」と低く艶っぽい声でいうと、悟浄は私のおでこにキスをした。


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