優人の下ではシルヴェスターが強い快感に打ち震えている。
 確かシルヴェスターはネコは初めてだと言っていた。しかし、優人の持つ知識には初めてのアナルセックスはほぼ痛いだけで、挿れられればいい方であったはずだ。
 ―――女官かお付きの人がいらん気ぃ回したとか?ローションに媚薬効果でもあったんかな〜。
 好きかどうかを考えていたのに、次第にその思考はずれていく。


 そんなことを考えている間も腰は動いているため、それに合わせてシルヴェスターの孔も優人に快感を与える。



「っ、(あー、マジ気持ちい、)」



 はぁ、と優人が荒い息を吐く。と、それを耳元で聞いたシルヴェスターの孔がきゅっと締まる。



「うぁっ、……、ユ、ユウト、…っ、も、」

「んー?……っ、なに?もっと奥に欲しいの〜?」



 ただの吐息にさえも感じてくれるシルヴェスターに『本っ当に俺に惚れてんだなぁ』とニヤついていると、シルヴェスターが切羽詰まった雰囲気で優人の名を呼ぶ。その声にそろそろかなーと考えながらも、知らぬ振りをしてぐっと奥まで突っ込んでやった。



「――――っ!」

「んっ、ちょ、シルヴィ締めすぎっ、」



 自分で仕掛けたこととは言え、あまりの締め付けに優人の限界も近くなる。
 しかし突っ込んでいる方な手前、先にイくのも格好悪い。優人はなるべく余裕ある態度を意識して、シルヴェスターの耳元で囁いた。



「ね、シルヴィのガチガチでぴくぴくしてる。そろそろイきそ?」



 シルヴェスターがぶんぶんと首を縦に振る。



「俺もそろそろ限界。前も触ってやるから、一緒にイこうね」

「ひっ、……っ、!」



 シルヴェスターに覆いかぶさるようにしていた上半身を起こし、片方の手でシルヴェスターの腰を抑えながら、もう片方の手は猛ったシルヴェスターのモノを握る。ぐりっと亀頭を弄ると、後ろの孔がよく締まった。
 そのまま前を弄りながら、後ろはシルヴェスターの良いところをぐりぐりと強くこする。



「っ、初めてなのに、ちょー気持ち良さそうだねぇ。ん……、このまま後ろクセになったら……、はぁ…、…どーする?」

「……俺っ、は、んっ、……も、お前、としか…っ、ヤんねぇ……んっ!はぁ、……責任、取って、もらうさ……っ」

「……………」

「っ、おい、止まんなっ、……っ、頼むから、焦らすなっ、ユウト……っ!」

「え、あー…、うん、今動くよー」



 ビックリして思わず腰を止めれば、シルヴェスターが後ろを振り向いて優人に催促する。涙に濡れた目は思いのほか扇情的だった。
 再び優人が腰を動かす。
 限界が近いのか、シルヴェスターのナカがぴくぴくと痙攣し始めている。
 優人の息も荒い。しかし、何故か脳内は妙に冷静だった。



(今の、もしかしてプロポーズ的な?シルヴィ、王様じゃん。子どもとかどーすんのさ。……いや、そういえば王族はセックス以外でも子ども作れるとかなんとか言ってたような……って、違う。そーじゃなくてぇ)



 そこまで考えて自分の思考回路が面倒になり、思わずグッと深く突き立て、前もぐりっと弄った。



「っ……、ぁ、…っ、出るっ、…ユウトっ、」

「んっ、俺も、」



 奥に突き立てたままぐりっと回すように動かすと、シルヴェスターの孔がぎゅーっと優人を締め付けた後、断続的にぎゅっぎゅっと締めつける。



「――――っ!」



 びゅっとシルヴェスターの白い体液が彼の腹に飛んだ。
 キツイほどの締め付けに、優人もシルヴェスターの中に体液を吐きだす。
 どくどくと脈打つのが分かる。熱いソレに、シルヴェスターは再び身体が熱くなった。


 はぁはぁ、と2人の荒い息が部屋に響く。
 優人は「はぁ―――っ」とひと際大きくため息を吐くとシルヴェスターの中から自身を抜き、彼の隣にごろんと横たわった。顔の前で腕を交差させて、顔を覆う。



(あー、ついにヤっちゃった。男とヤっちゃったよ。一番ビックリなんは、嫌悪感がないどころかシルヴィのことを『好き』だとか思ってる俺だよねぇ)



 なんか、大きく道を踏み外した気がする。
 もう後戻りができない気がした。



(でも元の世界に戻れないのはもう分かってるしー、この国同姓婚認められてるしー、シルヴィにはプロポーズ的なことされたしー、…………まー、いっか…)



 ちらりと腕の隙間からシルヴェスターを見る。彼はいつの間にか優人の隣に横たわっていた。横顔しか見えないが、やけに真剣な顔をしている。
 何考えてんだろう、と考えたがすぐにそれはやめた。そんなことよりも、先に伝えなければならないことがある。



「ね、シルヴィ」

「ん?なんだ?」



 男前な顔に優しい表情を載せて優人を見るシルヴェスター。そこに先ほどの真剣な表情はまったく見られない。
 彼は優人を見るときは決まって穏やかな光をその青い瞳に灯す。政治や様々なことで悩んでいても、それを一旦横に置いて、真正面から優人を見るのだ。
 真っ直ぐすぎるシルヴェスターは見ていて眩しくも感じるが、そんな彼が、嫌いではなくむしろ。



「お試し期間、やめよっか」

「!!なにが、何が悪かった?同性同士の情事は気持ち悪かったか?」

「え」

「それともやはり俺のあんな声が気持ち悪かったか?それなら今後はなるべく我慢するようにする、だから、」

「いやいやいや、ちょい待ってよ」



 上半身を起こし、優人に覆いかぶさるようにして口早に述べるシルヴェスター。お試し期間をやめようという優人の申し出をマイナスの方向に捕えたということは考えなくても分かった。
 焦る表情を見せるシルヴェスターに、どうどう、と両手を向けて落ち着かせる。
 それを受けてシルヴェスターはきゅっと口を噤んだが、目から焦りや不安の色は消えていなかった。



(うーん、俺って愛されてるねぇ。そんなに良いとこ見せたことないっつーのに)



 普段クールで威圧的な態度なシルヴェスターのそんな様子を見て、優人はくつくつと笑った。
 両腕をシルヴェスターの後ろに回して後頭部に当てると、ぐいっと自分の上半身を起こす。
 口と口が重なった。
 軽い口づけはチュッというリップ音を立ててすぐに離れる。



「!」

「つまり、こーゆうこと。お試しじゃなくて、マジでお付き合いしませんかっつーお誘い。―――シルヴィの身体の責任、取ってやるよ」



 優人はニヤリと意地が悪そうな笑みを浮かべた。







end.




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