※何も知らない勇者設定





僕が里の人間じゃないと気付いてから、森の神殿を攻略して知った事実。僕は外の世界からお母さんという人に連れられて森に逃げ込んで里で暮らし始めたと教えられた。それを知ってから僕は疑問に思った事がある。そのお母さん、という人が僕にとってどんな人なのか。赤子、とは。物心が着いてから里の皆と暮らしていたから、そのお母さんという人がどんな存在なのかわからないし。赤子って言うのは、僕だというのは話からわかるけれどその意味まではわからないし。なぁそれってどういう事なんだろう、そもそも僕はどうやって生まれてきたって言うんだ?疑問に思った僕は、ナビィに問いかけてみた。

『大人の人が恋をして、愛し合って生まれるのが赤子。赤ちゃん、だネ!お母さんは女の人、そしてそのお母さんを愛してくれた人がお父さんネ。二人がケッコンをしてお母さんがリンクを生んでくれた人なのヨ』

興味深い話を聞いた。どうやら人間は人間同士でケッコンとやらをすると生まれるらしい。お父さん、と言うのはどんな存在なんだろうと新たな謎も生まれてしまったがふとその単語をどこかで聞いたと思い出した。確かゼルダが「お父様」と言っていた人物。ハイラル王をお父様と言っていたという事は、ナビィの話に当てはめてみるとハイラル王のお父さんとお母さんが愛し合って生まれたのがゼルダって事なんだろう。どうして人間は、僕が生まれたのかって謎に思いつつも、きっとそれは男女の人間が関係しているってのは何となくゼルダに当てはめてみてわかった。しかしどうやったら人間が生まれるのかまではわからなくて、そこんとこもよーく教えてよとナビィに聞いてみたけれど、何故かはぐらかされてしまった。謎は深まるばかり。はっきり言って今までの謎を解いてきたダンジョンよりも格段に難しい問題だ。

『とにかく赤ちゃんの事はわかってくれた?』
「うん、赤ちゃんってのは人と人との間に生まれる奇跡みたいなものだってのは」
『奇跡、うんそうネ奇跡ネ!愛し合う二人の間に生まれる宝物ヨ』

奇跡や宝物等、女の子が喜びそうな単語に益々赤ちゃんというのが素晴らしいものだと認識してくる。実際女の子であるナビィはとても喜んでいた。僕も何だかそんな素敵な話を聞いて嬉しくなってしまったけれど。奇跡の贈り物・・・それも愛し合う二人の間に生まれるなんて、一人じゃ掴めないような幻の秘宝みたい。

「なまえと僕にも、その宝物ってのは生まれるのか?」
『・・・うーん?』
「?え、違う?」

愛し合う二人、その話の流れで僕の頭にぽん、と飛んできたなまえの存在。最近お互いが好きだって、わかりあってからなかなか会えない時もあるけれど、好き同士って事はつまりだ。愛し合うって言葉が当てはまるだろう?・・・多分。好きと愛し合うってのは、同じなんじゃないかなって漠然と思った。そうなれば僕となまえの間に赤ちゃんが生まれてもおかしくはないってもんじゃないのか。そうだと考えた僕の言葉にナビィは疑問のような声を漏らして僕の意見に肯定はしてくれなかった。あれ、そういう話じゃない?

僕の考えはこうだった。僕となまえが今のように好き合っていればいつかその赤ちゃんとやらが現れるんじゃないかって。例えばほら・・・手を繋ぐだろ?その間に赤ちゃんが生まれるとか。だけどナビィの反応を見る限りそれだけじゃない気がしてくる。手を繋ぐだけじゃないのかな。それとも、き、き、キスをした時とか・・・かな。これは最近なまえが教えてくれた事で大好きな人にしか出来ないものなんだよって、してくれた事。うん、きっとナビィはそう言いたかったに違いない。だって僕となまえがキスをしていた時にきゃーきゃーと僕と同じように恥ずかしがっていた。だから今もきっと恥ずかしいであろうこの行為を、言い辛そうにしていたに違いない。僕もその時を思い出すだけでもう恥ずかしい。

・・・まてよ、そもそも僕となまえはケッコンとやらをしていないじゃないか。そのケッコンとやらはどんなものか未だ不可解であるが、僕はなまえとケッコンというのをした覚えが無い。単語を聞くのだって今が初めてだ。

「ケッコンをしなくちゃ、赤ちゃんってのは生まれない?」
『・・・難しい問題ネ』

僕の問いかけにナビィはまたも肯定をしなかった。おかげで益々もってわからなくなった。それはケッコンをしなくても赤ちゃんってのは生まれるって意味か?それじゃあどうしてケッコンをするって言うんだろう。ケッコンの定義ってのは、何だ。男と女が愛し合うのがケッコンになるのか、それだけじゃないのだろうか。なぁナビィもう降参だよ、お願いだからちゃんとした答えをおくれよと強請ってみるもののナビィはとても気まずそうな顔をさせている。僕としてもナビィとしても、ふと思った疑問がここまで飛躍してしまって収集つけられなくなった事態にほとほと困っているようだ。僕とて疑問ばっかりで頭痛がしては全くすっきりしない今が、どうしたらいいのやらと困り果てているのに。

「ケッコン、ケッコンかぁ・・・」
『リンクはなまえとケッコンしたい?』
「・・・だからそのケッコンがわからないから答えに困っているってのに」
「結婚がどうしたの?」

うわ言のように難問であるケッコンの単語をぶつぶつ言っていると、ナビィにはとんちんかんな質問をされて答えが返せない僕の耳に、なまえの言葉が振ってくる。あれ、今の幻聴か?と思って僕が振り返ると久しぶりのなまえの姿が目に飛び込んできた。うわぁ、凄い嬉しい。最後に見た時よりもずっと綺麗になったんじゃないかって、僕はケッコンに悩んでいた考えを吹き飛ばしてはなまえの元へと駆けていった。ナビィはようやく僕の何故何どうして攻撃から免れたのに安心したのか、小さく安堵のため息を漏らしていたけれど。

「何の話をしていたの?結婚とか、聞こえたけど」

僕を真っ直ぐ見て言葉を紡ぐなまえは何故か不機嫌そうな顔をさせていた。どうしてそんな顔をさせるの、僕はなまえに久しぶりに会えてこんなにも嬉しいのにとなまえの表情を見て怖気づく。え、え、僕なまえに何かした?狼狽する僕の真横をナビィがすっと飛んできては事の事情を説明してくれる。日頃からナビィの存在に感謝をしていた僕だったが、今回はより一層その感謝の念が強く感じた。ナビィから事情を聞いてなまえはああ、そういう流れだったの。ごめん勘違いしたと何故か謝罪が飛び出した。一体何の勘違いだったのかはわからないままだったが機嫌が直ったなまえに余計な言葉はかけないようにしようと僕は何も言わないでおこうと思った。でも、なまえはケッコンというのを知っているような口ぶりだったような気がしてやっぱり僕は余計な事を尋ねてしまった。

「なまえは僕とケッコンってのをしたいと思う?」
「・・・ん?それはプロポーズのつもり?」

もし、万が一そのケッコンとやらを僕としたいってなまえが言ってくれたのだったら、僕はケッコンというのがいかになまえにとって嬉しいものなんだって理解が出来ると考え尋ねてみると、更にやっかいな問題になってしまった。あれここはなまえがケッコンしたいとかしたくないとか二択で答えてくれる場面じゃなかろうか。何、プロポーズだって??余計混乱するなんて思わなかった僕はもう思考回路が吹っ飛んでしまいそうになる。しかしそんな僕にお構いなしに、まさかそれがプロポーズじゃないでしょうね、とやや不満げな顔でなまえは僕をじっと見ている。えぇぇ、これどうしたらいい状況。なまえに久しぶりに会えて嬉しいって思うはずの展開がどうしてこうなったんだとナビィに助けを求めるものの、ナビィは『ワタシ知らなーい』とすたこらさっさと逃げ出してしまった。これはまずい状況、って事なのだろうきっと、いや絶対に。

「ナビィ待ってよー!」
「あ!言い逃げなんてずるい!」

逃げ出したナビィを今すぐにでもとっ捕まえて、ケッコンからプロポーズまでみっちり叩き込まれるまではなまえに顔向け出来ないと思った僕はナビィを全力で追いかける。だが逃げ出した僕をなまえもまた必死で追いかけるものだから、僕はふと思ったのだ。

きっと、ケッコンというのは大事なものなんだろうと。じゃなきゃなまえがこんなに必死に僕を追い掛け回すなんてしないと思ったからだ。








ケッコンと言うのは愛する人と一生を共に過ごして、幸せを感じあったり赤ちゃんを育てて今の僕達のような大人に育てるような、己の人生全てを賭けて生きていくものらしい。二人の間に生まれた赤ちゃんは、それはそれは何より大切な宝物でなまえに対しての気持ちのように、愛おしさが育まれると言う。そんな宝物のような人生をなまえと一緒に過ごしたいでしょう、と言うナビィの言葉に膨れ上がるのはなまえとケッコンしたい、ただそれだけだった。きっとなまえが必死になったのも、僕とケッコンしたいって思ってくれているのだろうと思った僕は嬉しさに舞い上がる。

ケッコンの段取りの中にプロポーズという言葉があると、後にナビィに教えられて僕は必死でなまえの一生に残るようなロマンチックなプロポーズの言葉を考える。なまえとケッコンしたいという欲望を叶える為のスタートラインを、今僕は走り出すのだ。

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