貴方が全て


※死ネタ有





 お空に逝ってしまった貴方がすぐ近くに居ます。
ああやっぱり貴方が死んだなんて嘘だったのだ。
目の前で倒れた貴方も、冷たくなって棺桶に収まる貴方も見たというのに。
嬉しくて嬉しくて僕は抱きつくのに貴方はすり抜けてしまうのです。
なんで、なんで、なんで。
こんなにも近くにいるのに貴方に触れられないのですか。
いつも無表情だった貴方が悲しそうに顔を歪めるのを見て、僕の胸が痛む。

「プーチン」

呼ばれたことで体の底から熱いものがせりあがってくる。
涙がはらはらと落ちて、手に持っていたものも落ちた。

「キレネンコさ、ん……」

赤く赤く染まる手をキレネンコさんが握ってくれた。
触られる感触はないのに、体が温もりを覚えている。
僕はキレネンコさんに会うために、かたきをはらすために。
人を殺しました。
だというのに僕はちっとも貴方の近くにいける気がしないのです。

「もうやめろ」

無惨に草臥れた四肢が床に転がっているのを見て、キレネンコさんの瞳から涙が溢れた。
カッと何かが込み上げる。

「ぼ、くはっ、貴方のために! キレネンコさんを殺したやつなんか! 死んでしまえば」
「プーチン」

僕は何を間違えたのだろうか。
間違えてなんかなくてまわりが変わっただけなんじゃないのか。
それ以前に僕は。

「僕は僕ですか。僕は僕だったのでしょうか。でも今も前も僕はキレネンコさんが大好きです」

大好きなんです。
キレネンコさんが朧気に空気に溶け出して、最後にぽつりと呟く。
その言葉に、僕は何をしてしまったのだろうかと、その場に蹲った。

貴方が全てで貴方を失い手を汚した僕に貴方は言うのですか。
好きだと。



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プーチンは変わったわけではなく、愛した人を殺した人を殺したというだけ。
それだけだけど、それをキレネンコは悲しく思った。

最近、こんなのばっか。




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