片思いの想い
「おーす、遊びに来たぜー。」
「いらっしゃい、カンシュコフさん!」
懐かしい声にプーチンは、ぱあと顔を輝かす。
紙袋を片手にカンシュコフは突然、プーチンとキレネンコが住んでいるところにやってきた。
カンシュコフがここを訪れるのは不定期だ。
「元気だったか? これ、土産。」
紙袋をプーチンに差し出すカンシュコフの瞳は熱く、恋をしているそのもの。
それでもプーチンはそれを知らなく、カンシュコフを見る目はただの友人。
上機嫌にプーチンはずっとにこにこしている。
「お茶、入れますね。」
くるりとキッチンに向かっていく背中を抱きしめたくなったカンシュコフは右腕を伸ばした。
けれど、空気を掴むだけで終わる。
ぎゅっと拳を握って、プーチンから視線を反らした。
それからふっと自嘲気味にカンシュコフは顔を歪める。
(そうせ、叶わないのだから嫌いになれてしまったらいいのに。)
それが出来ないと自分でもわかっているからこそ何度もここに訪れてしまうのだ。
だけれど、プーチンの幸せを願っているからこそ手を出さない。
「……幸せになれよ、プーチン」
プーチンに聞こえないように小さな声で呟けば、
「ほっ? なんですか?」
振り向いて聞いてくる。
なんでもない、と呟いたあとカンシュコフは微妙な顔で笑った。
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報われない