記憶渦旋



 どこかで呼ぶ声がする。

「兄貴」どことなく嬉しそうな声。
「兄貴」なんだか怒っている声。
「兄貴」珍しく悲しそうな声。

「キレネンコさん」
心配そうなプーチンの、声。
そこでやっと自分が呆然としていたことに気がついた。
少し泣きそうな表情で、大丈夫ですかと尋ねてくる。
それを横目で見つつ、外に出た。

プーチンと、いつしかのあいつが重なって見えてしまった。

記憶渦旋。



 思い出そうとして、思い出せないことになんだか苛立ちを感じた。
なんで忘れてしまったのかなんて決まっている。
長く、プーチンと居すぎたせいだ。

『兄貴』

そう呼ぶ声はすごく鮮明に覚えている。
顔も覚えている。
けれど一緒に過ごした日々は覚えていない。
全てプーチンのことで塗りつぶされてしまっている。
それまでほどの依存、自嘲がこみ上げてきた。

「キレネンコさん?」

プーチンが外に出てきて、俺の顔を覗き込んだ。
腰をぐいと引きよせ、唇を奪えば甘い声が聞こえる。
離せば、溶け出しそうな顔が眼前にあった。
それからふにゃりと笑う。

「キレネンコさん、さっき少し笑ってた……。初めて見たなあ…ふふ。」

すごい嬉しそうなプーチンの体を離し、空を見上げた。
星が輝いている。

「……きれい、ですね。」
「…ああ」

きれいだなんて感情、いつ覚えたんだろうか。
そんな感情は持っていなかった。
必要なかった。
本当に、プーチンのせいだ。

プーチンはにこりと笑う。
それがいつかの記憶とかぶった。
なんだったかと思いだそうとして、やめる。
考えればすぐわかることだった。
今に過去は必要ないのだ。
それなのに、ああ、ばかみたいだ。

「……プーチン。」
「はい、キレネンコさん。」

軽くプーチンの唇に口づける。
そうすればプーチンは照れたようにはにかんだ。


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どっちみちgdgdなのだねorz





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