愛しますわ


 唐突に男子生徒から屋上に呼び出された。

「好きです。僕と、」
「いやですわ。」

男子生徒に対して、ばっさりと言い切る。
やや涙目の相手に溜め息が漏れた。

(こうして会ってあげてるだけでも感謝してほしいぐらいですわ。)

だけど、と男子生徒は食い下がる。

「一回だけ、デートしてくれたら諦めるからっ…」
「あなた、口癖は? 納豆にネギ入れるタイプですの? 幼稚園生の時に好きだったアニメは?」

しん様なら、語尾はぞ。
しん様なら、納豆にネギを入れる。
しん様なら、アクション仮面とカンタムロボって。

「好きなタイプは?」

しん様なら、年上の女性だって。

自分に告白している時点で、この男子生徒はしん様に成り得ない。
その前にしん様はしん様だから、代わりはないのだ。
だけど、しん様は側に居てくれない。
どんなにアプローチしたって、どんなに好きだって。
なるべく近くに居たいから親の反対を押しきって、小学校と中学校は別々の学校だったけど、高校は一緒のところにした。
しん様は困ったような顔をしていて。
今思えば、迷惑だったのかもしれない。
じわりと目に涙が浮かぶ。
いつも聞いてるのにはぐらかされる答え。

(しん様は私のことをどう思っていらっしゃるの?)

涙をどう受け取ったのか、男子生徒は私の肩を抱こうとした。
私に触らないで、そう言おうとしたけれど嗚咽に邪魔される。
伸ばされた手は私の肩を掴む前に誰かの手によって叩かれた。

「しん、様…」

いきなり出てきたしん様は私に寄り添うように背後に立っている。
後ろを向かなくたって手で、気配でしん様だとわかった。

「何、泣かしてるんだぞ」

低くて怒りを含んだ声色に自分が言われてるわけではないと思っていても体がびくっと揺れる。
怖いのと嬉しさが重なって。
さらに涙が溢れた。
男子生徒も怯えた様子で慌ててこの場から立ち去る。

「しん様っ!」

振り替えって抱きついた。
怖かったわけじゃない。
だけど涙がポロポロと流れ続けた。
嬉しい、本当に嬉しい。
けれど今の自分の考えに絶望を感じてしまったのだ。

「しん様……っ」

「ごめんね、あいちゃん。全部聞こえてた。でも、俺は幼稚園の頃とは違うんだぞ。」

頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。

「だから嫌われるのが怖くて、あいちゃんを遠ざけてたんだぞ。……好きだからこそ。」

最後の言葉にびくりと体が震えた。
好き、でも近くにいてくれないの?

「私は、どんなしん様でも愛しますわ。好きです、しん様。」

少し体を離し、上を向く。
間近にあるしん様の唇が苦しげに息を吐いた。

「今までの苦労、返してほしいぞ……。」

口を塞がれる。
キスだ、今までずっと夢見ていたしん様との。

「しん様大好きですわ。」

にこりと微笑めば、しん様はもう一度私の唇にキスを落とした。





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あいちゃん好きだよあいちゃん
映画で大人あいちゃん見たかったあああ




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