残夢の中で


「ふぅー」

耳に息を吹きかけられてぞくりと体が震える。

「しんのすけ! いつもいつもやめろよ!」

幼稚園からずっと僕が耳弱いのをいいことに息を吹きかけられるけれども今日はこれだけじゃなかった。

「相変わらずですなあ、トオルちゃんのか・ん・ど。……ではこちらは?」

するりとしんのすけの手が服の間に入ってくる。
肌を這う手とは違う手が服を剥いでいく。
しんのすけの舌が舐めた首筋が外気に触れてひどく冷たい。
抵抗すれば出来るのに体が動かなかった。
事はどんどん進んでしまって。

「う、っあああああ!」

絶叫とともに飛び起きた。
まわりを見渡せば自分の部屋と窓から差し込む温かい朝日。
……嫌な悪夢だ。



「か・ざ・ま・く・ん。」

フーと耳に息を吹きかけられ、体がゾワゾワと竦む。

「いつもいつもやめろって言ってんだろ!」

振り向いて思いっきりしんのすけに罵声を浴びせた。
だけど、しんのすけは満面の笑顔で僕と対峙する。

「会いたかったぞ。」
「僕は会いたくなかった!」

しかも、こんな夢を見た後で。
しんのすけと久しぶりに会えるからって、浮かれ過ぎていたのだろうか。
だからあんな夢を。
頭の中に浮かんだ夢の繰り返しを慌てて首を振って消す。
とりあえず、高校が別だからしんのすけとは会う時間が少ないのだから楽しまなくては。

なんで僕たちがこんなに頻繁にあっているかというと、実は付き合っているからで。
でも本人には自覚が無いらしい。
恋人の前で普通にナンパするか?
それでも嫌いには、なれないから。

「どうしたの、風間くん。」

顔を覗き込むしんのすけを大げさに避けてしまった。
意識してしまっている。
それでもしんのすけは近寄ってきて、キスできそうなぐらいに顔を寄せた。

「近づくなって……!」
「今日、楽しみにしていたんだぞ。それなのに風間くん全然楽しくなさそう。」

その言葉に胸がずきりと疼いた。
楽しくないわけじゃない。
だけど、ああ、せっかく会えたのに僕は。

「しんのすけっ……。」
「隙あり!」

ちゅ、と軽い音がして唇に柔らかいものがあたる。
その行為がキスだと気づいたのはしんにすけが離れて笑顔を浮かべてからだ。
一気に顔が赤くなる。

「なにするんだよっ! こっちはおまえとエッチなことした夢見てこんがらがってるってのにっ…あ。」
「エッチな夢? 風間くん、僕と夢の中でしちゃったの?」

しんのすけはびっくりもせず、そう言うから意地っていうものがでてくる。
やけくそ、と言ってもいいけど。

「ああ、そうだよ! なんかいけない?」

腕を組んで、開き直りモードに入るけれどしんのすけははにかんだような照れ笑いを浮かべた。

「俺とおんなじ、風間くんに会うの楽しみすぎて。夢の中で風間くん食べちゃったぞ。」

さらに顔が熱くなるのを感じた。
同じ時間に、同じ夢。
なんかそれって本当にしんのすけとヤったような感じで。

「これって、夢の中でヤっちゃった?」
「そんな非科学的なことあるわけないだろ!」

恥ずかしくて、出た言葉は可愛げのないものだったけどしんのすけは笑っていた。
それから、僕の耳元で囁く。

「ねえ、もう一回キスしてもいい?」





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どうぞ、キスしてくだs(ry




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