りあるおままごと
「ねえ、しんちゃん。おままごとしない?」
いきなりの提案にしんちゃんは驚いた顔をしていた。
「いきなりなんだぞ、ネネちゃん。」
赤く染まる空、放課後だから誰も居なくて屋上にはネネとしんちゃんだけ。
「しんちゃんは年上の一番好きな女性にふられて傷心中の役で、ネネはそれを慰める優しい恋人の女の子。どう? やらない?」
さっきよりもしんちゃんは驚いていたけれど、すごく悲しそうな顔をしている。
しんちゃんは断られないし断らない。
「……いいぞ。」
ほらね。
一時の、お互いの、慰めだ。
「ネネちゃん、帰るぞ。」
しんちゃんが扉から顔をのぞかせて言う。
結構、距離があるのにもかかわらず聞こえたってことは。
まわりが一気にざわめき始めた。
やっぱり、と思いながらもしんちゃんのもとに駆け寄る。
「どっか寄ってこうよ、しんちゃん。」
「おお、いいぞ。」
後ろから、噂好きの人たちの話声が聞こえる。
妬みの言葉も含まれていた。
ただの幼馴染だと思ってたのに、あんなのが釣り合うわけがない。
……もっともだと思う。
これはおままごとなのだから。
私は気にしていないのにしんちゃんは見せつけるようにネネの頬にキスをする。
まわりがわーとかぎゃーとか言ってるのが聞こえた。
「今日は楽しかった、ありがとう。しんちゃん。」
家の目の前でしんちゃんにバイバイと手を振る。
危ないからってしんちゃんは家まで一緒に送ってくれた。
本当に、本当の彼氏みたいで。
「ネネちゃん、」
しんちゃんが手招きをするから近付けば顔がすぐ至近距離にあって。
キスだと思ったときには口づけられていた。
嬉しい、けれど。
反射的に手でしんちゃんの体を押していた。
「ネネちゃん?」
わかってしまった。気づいてしまった。
甘い甘いおままごとはもうおしまい。
続けられない。
自分をただ傷つけているだけだ。
「しんちゃん…、ネネのこと好き?」
俯きながらそう言えば、しんちゃんはすぐ答えた。
「好きだぞ。」
嘘、嘘だ。
だっておままごとなのだから。
「もう、いいよ。しんちゃん、やめよう…。辛い、辛いの。」
涙が溢れ出して頬をつたう。
しんちゃんが本当に好きだから辛い、痛い。
ごめんね、わがままで。
本当はわかっていた。
こんなことをしても辛くなることも、しんちゃんにとっても慰めなんかにならないことも。
わかっていても大好きだからしんちゃんの隣に居たかった。
「じゃあ、今度はちゃんと告ってもいい?」
しんちゃんがそっとネネの頬に触れる。
なにを言っているの。
「好きだぞ、ネネちゃん。」
「…嘘。」
ちゅ、と額に口づけられた。
「ななこお姉さんも好きだけど、一番はネネちゃんなんだぞ。」
止めかかっていた涙が再度流れ出してしんちゃんの指を濡らしてしまう。
本当に、信じていいの?
「好き、ネネも好き。しんちゃんのこと」
今度はちゃんとしたキス。
唇が触れるだけのキスだけど甘い味がした。
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NLも好きなんだと言い張る