水面波紋


 お湯が満タンに張られた湯船に足を突っ込めば溢れ出す。
まるで自分の健二さんに対する心のように。


「夏希姉のこと、好き?」

隣でのんびりとお風呂に浸かっていた健二さんに尋ねる。
健二さんは顔を真っ赤にさせ、慌ててこちらを向いた。

「いきなり何を言い出すの?」

いきなり、と言えばそうかもしれない。
人が多いから一緒にお風呂に入っているこの場面で、この発言は少し空気が読めなかった。

「いや…、気になって。……で、好きなの?」

聞いてしまったからには答えを聞かねば。
健二さんは言いにくそうに躊躇ってから、口を開く。
なんだか妙にそれが色っぽかった。

「……好き…だけど、きっと恋じゃない…と、思う。」

健二さんは言いにくそうに顔を俯かせた。

「へー。」

それって恋愛感情はないってこと?
そう問いたいけれど口を閉じた。
図に乗るのは良くない。

「うーん…、でも佳主馬くんも好きだよ。」

にこりと健二さんは笑って言ってのける。
自分が何を言ってるのかわかってんの?
知ってる、それも恋愛感情じゃないって。
でも、でも。
少し期待してしまう。

湯船から立ち上がると水面が揺れる。
手から滴るお湯が波紋をつくった。





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カズケンお幸せにいいい




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