言い方がダメ


 キーボードを正確且つ素早く叩く。
それに合わせて画面の向こうのキングカズマが動く。
画面に「win」という文字とともにコメントが続々と出てきた。
おめでとう、やら流石、とかの言葉をぼんやりと見つめていれば後ろから気配を感じる。

「佳主馬くん、パソコン貸してー」

声からしてすぐ健二さんだと分かった。

「言い方がダメ。」

振り向きもせずそう言えば健二さんが頭を下げる動作が音でわかる。

「お願いします。貸して頂けませんか」
「……どーぞ」

すっとパソコンをずらして、健二さんを見れば満面の笑顔で礼を言ってきた。
わざと自分と健二さんがくっつくようにパソコンをあまりずらさなっかたのもわかってない。
このやり取りだって何回もしているというのにのってくれる。
純粋なところとか優しいところとか笑顔とか、好きなんだよなと思う。
だからこそ手に入れたい。
ずっといじめられていた頃ならこんなこと思わなかったかもしれない。
…いや、思っていたなと自嘲がこぼれる。
いつの間に自分はこんな強欲になったのだろうか。

「…んーと、…ああ……」

画面をじっと見ている健二さんを見ていると、どうしようもなく触れたくなった。
腕を伸ばせば届く距離。
動きかけた手を制し、拳をぎゅっと握る。
今は、まだ。
でもいつかきっと。
拳を自分の胸にあて、いっそう強く握った。





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も ど か し す




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