チャラ男会計受け 01.





これはとある高校の、とある生徒会室でのお話。

「あー…とそれから、春木場お前ちょっと残れ。話がある」

まるで社長のような立派な作りの生徒会長専用椅子にどかっと座って踏ん反り返っていた竜胆が、会議の終了の言葉と共にそう付け加えた。

竜胆の視線の先にいるのは、軟派という言葉がよく似合う金髪にピアスをした男。
生徒会長直々に居残りの命を受けてしまった春木場は「げ」とあからさまに嫌そうな態度で、そそくさと帰ろうと持っていたであろうカバンをどさっと床に落とす。

「あーあ、やっちゃったねぇ」
「あーあ、ついにやっちゃった」

春木場の向かいに座っていた生徒会書記の双子が、次々にそう口にして会長から睨みの一撃を受けきゃっきゃとはしゃぐ。

「そこのドッペルゲンガーズうるさい!はいはい分かりました会長ぉ、残りますよ」
「よし、じゃあ他の者は帰れ」

竜胆が腕を組んで周りを一瞥すると、双子が「じゃあ楽しんでねー!」「気をつけてねー!」と捨て台詞を吐きながら生徒会室から逃げるように出て行き、その他の生徒会メンバーも次々に帰り支度を始める。

春木場は知らない。
この後何が起きるのか――



チャラ男会計受け
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俺は分かっていた。なんで会長に残れと言われたのかを。
知らないフリして突き通すつもりだったけど、やっぱバレてたみたいだわ。

俺は生徒会の会計とかいう本来自分とは掛け離れた職に就いていて、でも元々頭が良い訳でもないし会計って仕事に誇りを持っている訳でもない俺が仕事を全うするはずがなく。
この前会長から頼まれてた書類の処理をサボり倒してたわけ。

つーかだって文化祭予算の振り分けとかしなきゃなんないんだよ?そんな計算してる暇あるならエロくて計算高い美人なお姉サマに翻弄されてたいっつの。

「………………のか」

と、思案に耽っていた俺の頭に不機嫌そうな低い声が届いた。はっとしてテーブル越しに座っている会長に目をやると、長い足を組んで肘掛けに肘を付き王様オーラを存分に発動させている会長が、じっと俺を見据えていて。

「あ、すんません聞こえなかったんでもう一回」
「お前……」

すくりと会長が立ち上がったのを見て、やばい殺られる!と思わず息を呑んだその瞬間、目の前の大男はあろうことかどさっと俺の隣に座ってきた。え、何何全然わかんない。

「なっ…なんなんですか会長ぉ近…」
「だから、お前迫られれば誰とでも寝るって本当か」
「は?」

絶対怒鳴り散らされると思ってたのに、まさかのこんな質問。つか意味分かんねぇよマジで。俺が言うのもなんだけど今する話じゃなくね?

応接間を兼ねている生徒会室の一角にある豪華な二人掛けのソファーに肩並べて座っているこの状態がまずおかしいってのに、このワイルドイケメンは何言い出すんだ。

「質問に答えろ」
「はぁ、まぁ…そーいう事もありますかねぇ?」

ここは正直に答えとくべきだろうという判断の元、至近距離から突き刺さる会長からの視線をかわすように明後日の方向を見ながらそう言えば、何を思ったか会長はその場に俺をどさりと押し倒してきたわけで。

「へっ……ちょ、会長なに…」
「じゃあ俺とも寝るのか」
「そ、れは…」

いつになく真剣な眼差しをまともに浴びてしまった俺は、目をしばたたきながら言い吃る。

まさかこんな事言われるなんて一ミクロンも予想していなかった。俺より体格のある男に迫られるなんて未曾有の出来事すぎるでしょ。ましてや生徒会長とか。
立場上断りにくいなぁとか、そもそもこれ何かのドッキリかな?とか考えながら窺うように目を合わせれば、それを了承の意だと思ったのであろう、会長の顔がゆっくりと下りてきた。

「え、会長ぉちょっ待っ…ん!」

そのまま噛み付くようなキスをされ、完全に思考が停止した。
貪るように繰り返されるそれに為すがままになっているこの状態はなんなんだマジで。
いい加減制止しようと口を開いた途端、待ってましたとばかりにぬるっとした肉厚のものが挿入される。ちょ、ママママジで……

「…っは、ちょ、かいちょ…んぅ!」

激しいそれが一旦終わったタイミングを見計らって口を開けばまたこれだ。すぐそこにまた舌を侵入されて、俺の舌と絡ませるように無茶苦茶にキスしてくる。それに応じてる自分はなんなんだってマジで。


やっと唇が離されて、ゆっくりと離れていく会長の顔。その顔があまりにも欲望を孕んだ雄の表情過ぎて、思わず目を奪われてしまう。この人こんなエロい顔すんだ……

「ね、ねぇ会長ぉ」
「好きだ」

え、と思った。
咄嗟に何も言うことができず、フリーズしてしまった俺の顔にまたもや黒い影が落ちて、耳元でもう一度同じ言葉を囁かれてぞくっと身体が奮えた。
そのままちゅ、と耳に生温い感触がして、耳たぶから穴までをねっとりと舐め上げられた。

「んっ」

思わず出てしまった声に、会長が嬉しそうに笑みを零したのが分かった。

「耳弱いのか」
「うるさ…っ、んっ」

耳ばかりをいやらしく攻められて、時折漏れる会長の吐息なんかもダイレクトに耳に響いて――あ、やばい本格的に勃ってきた。そう思った時だった。

「…っ!!」

するりと股間に会長の手が伸びる。さすさすとそこをまさぐられながら「駄目か」なんて低い声が這ってくる。
健全な男子高校生だもの。こんな雰囲気に呑まれて嫌といえる程、出来た理性など持ち合わせていない。

「…か、かいちょ…」
「名前で呼んでくれ、こんな時くらい」

竜胆せんぱい、とたどたどしく呼べば、何かのスイッチが入ったかのように会長の目に欲情の火が灯った。





「ん"…っん"ん」
「馬鹿、力抜けって言っただろう」

会長の象徴は思ってた通りでかくて、とてもじゃないけど入んない!そう思ってたのに。

「ん"…っ…ん」
「動くぞ?」
「んっ…あっ、ぁ」

丁寧に解されたおかげか男同士の情事に詳しかった会長のおかげか、すんなりとはいかないまでも俺の身体はそれを受け入れてしまった。

「ん"っ、ぁあああっ!」
「ここか」
「ちょ…やめっ…あっ…あっ」

しかも所謂前立腺の快感まで知ることになって。

「あ…っ、や、出る…出るっ…」
「俺も限界だ……出すぞ」

生々しい音と共に激しくなる前後運動に声が抑えられない。みるみる内に迫り上がってくる射精感に、ぶるるっと身体が奮えた。




* * *




「その……悪かった」
「謝らないで下さいよ」

謝られたらこっちが惨めなんすけど、そう続けようとしたのに、会長の手がぬっと俺の頭に伸びて思わず口をつぐんだ。
そのままがしがしとワックスまみれの俺の髪を撫でて、困ったように会長は笑った。

「…忘れてくれ」
「えっ」
「忘れてくれ」

眉間に皺を寄せながら俯くその姿があまりにも切なげで、とてもさっきまであんな大胆な事をしてた人間と同じには見えなくて。俺はついふはっと笑ってしまった。

「……何だ」
「いや?会長、なんか可愛いからさ」

そんなこと言われたの初めてですと言わんばかりのきょとんとした目に、更に俺は目尻を下げてこう続ける。

「会長ぉ、なんか勘違いしてるみたいだから言っときますけど――」

俺、一度寝た相手とそれっきりとか有り得ないんで。本気になりますよ?
ニコッと微笑みかけたら、耳まで赤く染まった会長が顔を背けた。






「あーあ、やっちゃったねぇ」
「あーあ、ついにやっちゃった」

一部の人からドッペルゲンガーズというあだ名で呼ばれているこの二人が、生徒会室から肩を並べて出ていく生徒会長と生徒会会計の姿をニヤニヤしながら眺めていた。

「会長良かったねぇ」
「これからあの二人のバカップルぷりを拝むことになるのかー」

顔を見合わせはははっと笑って、楽しそうに歩を進める。
空はもう暗くなっているというのに、あっちはなんかピンクのオーラが漂ってるよ、なんて言いながら。



---fin---




双子はこれから会長をおちょくり倒しにかかると思います。
匿名様、リクエストありがとうございました!



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