腹黒美形×ツンデレ 01.





手に顎を乗せ、授業が始まるまでの一時の間、教室内をぼーっと見ていた。

いつだってその中で一際目立っている生徒。
明るめの髪に、爽やかな笑顔。今時珍しい「万人受けする王子様」タイプなんだと思う。

いつ見てもそいつの周りには誰かが居て、そいつが中心に居た。



そいつに目が行ってしまうのは、俺の単なる気まぐれなのだろう。

俺もそいつも男だ。ましてや、俺はこの塾の講師なのだから――



リク作品腹黒美形×ツンデレ



そんなある日、いつも俺の視線の先に居た男が授業が終わってすぐに俺の元へやって来た。


「茨木せーんせ?」
「…お、何だ?」
「あの…、今、大学でレポート書いてるんですけど、どうしても分からないところがあって…教えて貰えませんか…?」

(熱心だな…つか、そんなうるうるさせた目で俺を見ないでくれ。)

「おう。今日はもう終わりだから、明日授業が始まる前で良いか?」
「この後とかって…駄目…ですか?」

(…ん?よっぽど切羽詰まってんのか…。)

「構わん、じゃあどこか店に入って…マックとかで良いか?」
「…」
「?最近の若者はマックとかで良いんじゃないのか?」
「茨木先生だってまだ充分若いですよ?」
「ははっ、生徒に気を使わせてしまったな、悪い悪い。」
「いえ…本当の事です。…あ、あの!」
「ん?何だ、神崎。」
「先生、実は…」


 *


「〜で、ここは、その文法を使うよりもこっちの方が簡潔にまとまるから…」


今、俺達は塾の教室に居る。
神崎が塾の室長に無理を言って残らせて貰えるよう掛け合ったらしい。

まぁ、こんな生徒からのお願い事は普通却下されるのだろうが、神崎の普段の素行の良さと俺が全責任をしょい込むって事で、室長も教室の鍵を俺に託して帰って行ってくれたらしい。

何つぅか…まあ、いいけど。


「…はい、…はい。」


俺の助言を聞きながら、黙々とルーズリーフに文字を書き連ねていく彼のその姿をじっと見ていた。

ふと、その視線に彼も気付く。


「…?どうしました?」
「あ?や、何でもない。ほら、手が止まってるぞ?」


至近距離で目が合い、思わず心臓をわしづかみにされたような想いにかられる。

(…本当、綺麗な顔だな…)


「もう、どうしたんですか?せ、ん、せ?」


奴が俺に近付いて来る。
ちちちちちょっと待て、それ以上近付くな。ちょ、近…

(…な、…え…?)



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