高校生/ヤンデレ/不良(童貞)
オレのトモダチは、ちょっとおかしいらしい。
やたらモテてる奴だということは前から知っていたけれど、いやまぁそれは関係なくて、あまりにも普遍さに欠けているらしいことが最近分かってきた。
オレがバイトしてるファミレスにいつの間にか矢吹が面接に来てて、何事かと思ったら『心配だから』と。そんだけの理由で遊びに来んじゃなく働こうとするんだぜ?ちょっとなんか色々歪んでるよな。まぁ別にいいけど。
ワルの塊みたいな生活してるくせに、肩まで伸びた金色の髪を後ろで束ねてきっちりファミレスの制服着込んだりして。学校の制服は着崩すにも程があるレベルでだらしないのに、バイトになると人が変わったように爽やかになる。
矢吹目当ての客で売上が上がったと店長は喜んでいたけれど、オレとしちゃあなんだろう……複雑?っは、よく分かんねぇ。
高校生/ヤンデレ/不良(童貞)
「手錠と首輪、どっちがいい?」
「は?」
学校からの帰り道、ふと矢吹は長い髪をかきあげながらこちらを見遣る。
「なに、AV?」
にたりとオレが笑うと、矢吹は不機嫌そうに違うよと眉を寄せた。
「ちげーの?あ、そういや前から言おうと思ってたんだけどさー」
のらりくらりと話題を逸らす俺にじとりと視線をやる矢吹。なんとなく重い空気が纏わり付いているのには気付いていたけれど、頑なに気付かないフリをした。
「オレがバイトん時まで待ってなくていーぜ?毎回毎回なんかわりぃし」
「…何、何で?」
「へ?」
元より俺が矢吹の数歩前をずんずん歩いていたわけだけど、後ろから追ってきていた矢吹の足音がぴたりと止まって思わず振り返る。
「やや、何でってオレ別に変なこと言ってないっしょ?毎回待っててもらえんのは嬉しーけどやっぱ悪いし!な!」
途端矢吹の周りに漂い始めた何故かドス黒いオーラを見て見ぬフリをしながらひょうひょうと告げる。
「何で?一緒に帰んの嫌になった?」
「や、だからそーじゃなくて、」
何言ってんのこいつ。普通にここいらで名の知れた不良で周りから恐れられてるくせして、たかがダチのオレ相手になんつー表情してんだ。
「俺が毎回待ってるの迷惑?それとも何か別の理由があるの?俺が待ってたらバイトの帰りに誰かを誘うことも出来ないから?」
何故か泣きそうな顔して必死に詰め寄ってくる目の前の男を不思議な感覚でみつめた。
宥めるように奴の横髪に手を差し入れて軽く梳くと、予想外だったのであろうオレの反応に矢吹はビクッと肩を揺らした。
「ふはっ」
「…なっ、何。何で何も言わないの」
「や〜なんか可愛いなと思って」
「な、何がだよ!俺は真剣に…っ」
ふざけてごまかされたとでも思ったんだろう、矢吹は盛大に唇をわななかせて俯いた。
つーか、そもそもなんかおかしくね?この小競り合い、ダチ同士でやるもんじゃないっしょ。あんな事聞いてくる矢吹も大概だし、そんな矢吹相手に可愛いとか言っちゃってるオレもどーなワケ。
無意識にすっと矢吹を真正面から見据える。今にも泣き出してしまいそうなしょぼくれた顔がそこにはあった。
「っは、なぁ…何でそんな事聞くの」
「なんっ…何でって…」
近くにあった電柱に片手をついてにたぁと笑いながら首を傾げる。矢吹は居心地悪そうに下を向いて、でも次の瞬間眉毛をキッと上げてなにやらやる気の顔になっていた。
「ぅお?」
「ごめん、やっぱり何でもない」
「…??」
はぁ、なんだそれ。意っ味分かんねぇ。すぐに沸き上がる沸点の低い苛立ちをそのまま顔に出せば、矢吹は困ったように笑った。
「俺はさ、お前の中で何番目の友達?」
そしてそんなくだらない事を口にされたから、速攻で1番と短く言い切ってやった。
「そっか」
なんかイラっとしたので、満足そうな顔で目を細める矢吹の頭に軽くグーパンチをお見舞いした。
「った…」
「痛くねーだろ〜?お前こんなん慣れてるくせに」
意地悪く笑えば、それもそうだねなんて間延びした声が返ってきて、へらへらと二人で顔を見合わせて笑った。
バカな男子高校生の会話なんて大抵こんなものだ。なんとなくこんな感じで流れてしまうもの。俺は胸につっかえた変なモヤモヤした気持ちを忘れたフリをして、また歩きだす。
「…あ」
ふと質問返しすんの忘れたーなんて思って、タタンと地面をローファーで擦りながらその場に立ち止まる。
「な、矢吹はオレのこと何番目に…」
「俺はお前の為なら死ねるし、お前がいなくなったら凄く嫌だ。悲しい。絶対後を追うね。誰よりもお前が優先順位の先にいるよ」
まるで恥ずかし気もなく当たり前のことのようにサラリと言われて。
愛の告白よりすげーこと言われてね?なんて思いながら、とりあえずははっと笑っておいた。
---fin---
まだ友達同士の二人。個人的には楽しく書かせていただいたのですが、ヤンデレ具合足りないかもですね(:_;)すみません。あと童貞設定が出せずに申し訳ないです!完全に私の力量不足です…!(土下座)少しでもお気に召していただければ幸いです。
depa様リクエストありがとうございました!
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