第8話




「あ、うん」
「あ、うんて!」
「なに?」
「あーいやなんでもないけど」

さらっと流された。うん。
これが所謂スルーというテクニックですか横田君。

友達同士でふざけて好きとか言うのはそんなに珍しいことでもないし、ましてやそんなこといったらさっき横田だって俺のこと好きって言ってくれてたし?
でもそんな全開でスルースキル発動されるのもこう、案外へこむもんだなとか肩を落としたその時。

「とか言って。…ね、高木」

横田はニヤリと笑って俺の名を呼ぶ。

「な、何だよ」
「俺も好きだよ、高木」
「お前それカンペキ俺に餌付けされてるだけじゃねーか」
「そんなこと……あるかも」
「ばーか」

ふう、と肩を撫で下ろして苦笑う。横田のやつ…真面目に言ってんのかふざけてるのかよく分からないから困る。こっちはお前の言動にしょっちゅう一喜一憂してるってのに。




「ふー…、お腹いっぱい」
「そら良いことで。つか何、もう体は大丈夫なん?ね、ね、もう寝る?」
「んー…」

折角の修学旅行だよ?横田も体調戻ったっぽいし、このまま寝てしまうっていうのはこう、ね、あれだよね。色々と勿体ないっていうか、折角横田と2人きりで一晩過ごせるっていう最大のチャンス到来してんだからね、こう、ね、あれだよね。

んー、と唸りながら髪の毛をかきあげて遠くを見つめる横田を視界に入れつつ、こういう時の為に持ってきておいたとっておきのモノを取り出す為、ガバリと立ち上がってキャリーケースへと向かう。

「じゃーん!」

ごそごそとケースの中を漁った俺は、すぐに見付かったお目当てのモノを横田によく見えるように掲げた。

「高木、これって……」


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