第41話
修学旅行明けの週末の、繁華街から少し逸れた人通りの殆ど無い薄暗い路地裏。そこから二人、同じ歩幅で歩いていく。
今頃同じ斑のメンバーはカラオケで盛り上がっている頃だろう。主に山下とか山下とかが。
「な、どうする?」
「…なにが」
「打ち上げ。行く?」
のんびりと歩を進めながら聞いてみる。
あぁ、天にも昇る気持ちとは正にこのことなんだろう。幸せ過ぎて、俺の人生のピークは正に今なのかも知れない。
「どっちでもいいよ」
「えー。ここは『高木と二人でいたい』とか言うところじゃないの?」
「なっ…」
茶化すように言えば、横田はぐぬぬと俯いていく。横田がこんなに表情豊かな奴だったなんて知らなかった。しかもその視線は他の誰でもない、俺に向けられているだなんて。こんなに照れたりする横田を拝める日が来るなんて。
これからは親友なんていうポジションじゃなく恋人として、横田と並んで歩くことができるなんて。
「ふはっ……っあー!やべ、俺まじやばいかも。もう死んでもいい」
「ちょっと…今死んだら駄目でしょ」
心なしか横田くんの台詞の数が増えた気がする。あー…こうやって少しずつ、新しい横田を発見していくんだろうか。
「よーこたー」
「…なん…だよ」
「ははっ、なんでもなーい」
行きはあんなにどんよりと暗かったはずなのに、なんでだろう…同じ道を同じ人と歩いているのに、今はこんなに輝いてみえる。恋愛ってすげぇ。
「ねぇねぇ横田」
「…?」
ふと立ち止まって、不思議そうにこちらを振り向く横田に笑いかける。
「好きだよ」
「…!」
片手で顔をぱたぱたと仰ぐ横田、ほんと可愛いなーとか思ってたら、ばしんと背中を叩かれた。
「横田くんヒドイ!」
「…ばか」
横田くんツンデレ属性なのかな。あぁもう、全てが愛おしくて、この人が自分を好いてくれていることがたまらなく嬉しい。
無表情だった頃の横田くんも非常にグッジョブだったけど、こうして俺の発言一つにころころ表情を変える横田くんはもっともっと魅力的だ。
「……」
「……」
路地裏出てからやたらと心臓が煩い。ばくばくばくと、そろそろ心臓が悲鳴をあげている気がする。でもこんなに心地の好いドキドキは初めてだ。
もう一度横田の顔が見たくてゆっくり隣を伺うように見ると、まさかの横田も同じ考えだったらしく、ばちりと音を立てるように視線が交わってしまう。
お互い照れくさそうに、はにかむように笑い合う。なんだこれ、幸せ過ぎる。
時折ひゅおおぉと吹いてくる冷たい風も、今は心地好く首筋を通っていく。…さっきはあんなに寒かったのにな。
深い静けさの漂う小道から、遠くにうっすら見え始めた繁華街に目をやると、がやがやとひしめき合う人達の姿が見えた。
今俺達はあそこにいる誰よりも、一番幸せ絶頂だなぁなんて考えながら、ゆっくりゆっくり歩いていった。
「っあ、なー横田!そういえばあれじゃん、俺達も晴れてBLの仲間入りだな!」
「え、ベーコンレタス?」
---fin!---
おしまいです!!
なんだかんだでハッピーエンド。ぱちぱちぱちです´`!よかったね高木くん!
最後あのセリフでしめようというのは、連載当初から密かに決めてました(笑)
本編41ページという長丁場、お付き合いくださって本当にありがとうございました!
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