第12話




んー…。もう、ガチガチ。
そりゃあね、いつも想像していた人の生エロシーンがすぐ隣で今まさに行われているわけだからね、興奮しないわけがないよね。

横田に起きていることがバレないように至極気を使いながら右手を自分の股間にやってみる。
もう見事にテントを張っているそこは、今掛け布団を剥がされたら一発でレッドカードを喰らいそうな程に硬く張り詰めている。

「…っ…、…っ」

隣から聞こえる横田のこの息づかいが、煽るように俺の身体の中を巡っていく。あー、この吐息録音したかったな。さしてくんねぇかな。くんねぇか。この音源だけで無限回オカズとして使えそうだ。

この変な緊張感と色っぽい横田の吐息に苛まれて、なんか背中がぞくぞくしてきた。なんか尻もきゅうぅって締め付けられるように反応してるし。なんだこれ。興奮し過ぎるとこんななっちゃうのか。



「……よこた」

――気付けば、掠れた声であいつの名前を呼んでしまっていた。





途端、ピタリと先程までの音が全て止んで、一気に静寂な空気が部屋を包み込んだ。

オナニーの途中で声を掛けられること程心臓が止まるくらい血の気が引くことってないよな、分かる。
多分あいつは普通に驚いて固まってしまったんだろう。分かる分かる。

だから、くるりと横田の方に体を向けてもう一度名前を呼んだ。

「…横田」

ほの暗い部屋の中見える横田の細っこい背中が、ビクリと分かりやすく震えた。
そのあとまたピタリと動きを止めて、ただの屍のように身じろぎ一つおこさずに静寂が部屋を包みだす。

こいつ、あくまでシラをきるつもりだ間違いない。俺としてはこんなチャンスをものにしない手はないというのに。つか声掛けちゃったんだから、もう後には引けないっつーの。

だから勇気をだして、横田の背中に指を這わせてみた。
人差し指でつー…と肩の辺りから腰まで上から下になぞるように滑らせると、「んっ…」とまさかの色っぽい声が返ってきて、思わず股間がずくんと反応する。うわっ、こんな声とか出すの横田くんそれ反則…

それでも一向にこちらを向いてくれない横田くん。
今横田と向かい合う形になったら、お互いの勃起姿丸出しなんだろうか。あ、でもきっと横田は肝が冷えて萎えちゃってんのかな。スエット越しに勃起してる姿とかまじ拝みたかった。

そして、この状況をどうしたもんかと悩みながら、もう一度背中に触れちゃおうかななどと考えていた時。
やたらゆっくりとではあるが、目の前の人物が漸くがさごそと動き始めたのである。


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