結局綱吉くんのお陰で、白蘭さんのボンゴレアジト滞在が認められた。
ただし、24時間監視付き。
その監視役は、僕。
4:こういうのって
元ミルフィオーレである僕に監視役を任せてくれるあたり、ボンゴレは皆人が良すぎだと思う。
普通は元敵になんか任せられない。
でも、こういうところに、皆からの信頼が感じられて心地良い。
そんなことを思いながら、正一は廊下を一人歩いていた。
白蘭のアジト滞在が認められた後、正一は白蘭の今後について話し合うために、あの部屋に残っていた。
白蘭とスパナは、白蘭のメンテナンスがあるからと先に戻っていった。
きっとまだ、スパナのラボだろう。
正一はそう思い、スパナのラボへと足を運んだ。
「スパナ」
「あ、正一」
ラボにはいると、いつものようにモスカをいじり、飴を舐めるスパナが目にはいった。
あたりを見渡してもモスカ、モスカ、モスカ。
白蘭の姿がない。
「白蘭ならさっき正一の部屋に送ってきた。部屋にいたいっていうから」
「そう…」
正一は痛む胃に少し顔をゆがめながらスパナの横に座った。
てっきり、急いで帰るものだと思っていたスパナは首をかしげる。
「相談があるんだけど…」
「なに?」
スパナは自分と正一の分の茶をいれ、あぐらをかく。
緑茶の香りで少しおちついた。
「白蘭サンの監視役をまかされた」
「へぇ」
スパナは少し驚いたような顔をする。
これが普通の反応だろう。
「白蘭サンの部屋があてがわれるから…そこにカメラとかマイクとか…あと勝手に外にでれないような仕組みにして…あと…」
「……」
「えっと…」
やらなければならないことを事務的にならべていく。
たくさんありすぎて、逆に言葉にできない。
いや、言葉にできないのはそれだけが原因ではない。
「やりたくないのか?」
スパナは、勘がするどい。
だから、いつもこうやって言い当てられる。
それがとても、有り難かった。
「…実は、そうなんだ…」
「友達だから?」
正一はうつむく。
白蘭は大学に共に通った友人だ。
それをカメラで監視したり、拘束するのは、気が引ける。
だが、やるしかない。
「あ、なら…」
「?」
スパナが何か思い付いたかのように、声をもらした。
正一はうつむいていた顔をあげる。
「正一の部屋で一緒に暮らせばいい」
「え?」
スパナの突拍子のない提案に目を丸くする。
スパナは名案とでもいいたそうだ。
「一緒に暮らせば、カメラなんて必要ないし。気も引けない」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。そんな…一緒になんて…」
「白蘭も正一の部屋気に入ってるみたいだし。問題ない」
「山積みだよ!」
正一は叫んだ。
一緒に暮らすなんて、とんでもない。
問題ないだなんて、簡単にいうが、問題は、例えば…ええと…
「な、問題ない」
「……まぁ」
「よし決まりだ。ボンゴレに連絡しよう」
そう言うとスパナは近くにあったパソコンを開き、通信をつなぐ。
正一は狼狽え、止めに入ったがスパナはまったく聞く耳を持たない。
一緒に住むなんて、考えもしなかった。
同じ部屋で、24時間一緒。
そんなこと、今まであっただろうか。
「きっと白蘭も喜ぶ」
「え?」
スパナがぼそりと呟く。
正一はそれを聞き声をもらした。
「なんでもない。ほら、正一から説明しろ」
「え、あ、ちょっと!」
パソコンの画面にはテレビカメラに写った綱吉の姿があった。
正一がしどろもどろに説明すると、またもや綱吉はあっさりと受諾してしまう。
「決まりだな」
スパナが満足そうに言った。その顔は心なしか嬉しそうだ。
しかし、正一はこれからの生活を予想し、きりきりと痛む胃をさするしかなかった。
「あ。こういうのって」
スパナがつぶやいた。
二人はお互いに顔をあわせる。
「こういうのって、同棲っていうんだよな」
「…同居っていってくれないか」
あぁ、胃が痛い。
正一は並べられたモスカをぼんやりと眺めながら背後へと倒れ込んだ。