「いいよ、大丈夫そうだし」
自分で頼んでおきながら、この言いぐさはさすがにないかもしれない、が、言わせてもらう。
そんな軽くて大丈夫なのかい?綱吉君!!
3:いいんじゃないかな?
「生前と比べて炎の量も少なくなっているし、体力も大分落ちている。あと免疫力も…」
「納得できる訳ねぇだろ」
スパナの説明を遮り、獄寺が言った。
正一達は白蘭を引き連れ、ボンゴレ幹部のあつまる会議に参加していた。
そこには珍しく、守護者全員が集合していて、真剣な顔つきで白蘭を見ている。
生き返った経緯、今の状態をスパナから説明し、正一がこれからどうするのかを提案する予定だった。
そしてその白蘭はといえば、念のため腕を拘束されてはいるが、特に逆らう素振りは見せず、ニコニコと笑いながら正一の後ろに立っている。
自分の生死がかかった話だというのに、その緊張感は感じられなかった。
「あんだけ必死になって倒したんだ。いきなりホイホイ生き返りました、なんて言われて受け入れられる訳ねぇだろ」
「それは…」
獄寺の意見はもっともだ。
もちろん、それはわかっている。
守護者たちの冷たい視線が突き刺さるようだった。
彼らは、いや厳密に言えば10年前の彼らは、白蘭のせいで何度も傷ついた。
それだけではない、彼らの大切な人々が、白蘭に一度殺されたのだ。
例え全ての人が生き返ったとしても、簡単に受け入れられる訳がない。
「まぁ確かに…簡単に友達にはなれねぇよなぁ…」
「うむ…この男はな」
山本も了平もはっきり言わないものの、白蘭をアジトに置くことに反対のようだった。
クロームも快くは思っていないのかうつむいたままだ。
「雲雀君はどうかな」
正一がダメ元で問う。
窓際にもたれながら距離を置いて話を聞いていた雲雀は、そのまま視線をこちらに向けずに答えた。
「僕には関係ない。僕のとことここは不可侵だからね」
「このまま生かしておくことはどう思う?」
「………」
雲雀はちらりと白蘭を見た。
そしてすぐに視線をもどす。
「生かす価値はあるんじゃないの?」
「!?」
その言葉に真っ先に食いついたのは獄寺だった。
「てめぇふざけてんのか!?こいつがどういうやつかわかってんだろ!?」
「君こそわかっているのかい?彼はパラレルワールドの知識を有してるんだ」
利用価値があるだろう?
雲雀の一言に、全員が目を見開いた。
白蘭には確かに利用価値がある。
彼の知識は全ての最先端。
それをみすみす、捨ててしまってよいのだろうか?
「いいんじゃないかな?」
全員が声の主の方を振り返る。
一斉に振り向かれて、声の主である綱吉は慌てふためいた。
「十代目!何をおっしゃるんですか!!」
「え、いや、そのまんまなんだけど…」
綱吉はちらりと白蘭のほうを見て、言った。
「俺の超直感では、危ない感じしないし。記憶もないんでしょ?」
「お言葉ながら十代目は甘すぎます!!」
バンッと獄寺がテーブルを勢いよく叩きながら立ち上がった。
10年たって大分慣れはしたが、この迫力には未だに圧倒される。
「骸のときもそうですが、あなたは誰もかも受け入れすぎです!入江にしたって、もともとはミルフィオーレだった訳ですし、今は仲間として信頼してますが、最初はまったく信頼できなかった!」
獄寺はいつも以上に荒々しく言った。
これはもちろん、綱吉の身を案じてのことだ。
知識よりも何よりも、大切なのはボスの命。
それは守護者全員がわかっている。
しかし綱吉は、それをわかっていながらも、依然と、笑顔で言った。
「大丈夫だよ。ね?…白蘭」
綱吉は、その笑顔を白蘭にむけた。
白蘭はきょとんとした顔をして綱吉を見ている。
しかしながら、この笑顔に一番驚いていたのは正一だった。
そんなに、軽くて大丈夫なのか。
思わず口からでそうになったその言葉を、正一はなんとか押し込めた。