白蘭さんが死んだ









僕が、殺した…










1:おかえり









あの一件から数か月後。
怪我も治ってきた正一は正式にボンゴレファミリーとして働いていた。

綱吉からの信頼もあつく、今では同盟マフィアとの交渉なども任されている。

忙しくて休む暇もない。
でも、それがありがたかった。


少しでも暇があると思い出す。
白蘭と過ごした学生時代や、ともに働いていた時のこと。
白蘭の、死に際。

自分で計画したことだ。
自分だってこの結果を望んでいた。
でも、いざ目の前で旧友が散っていく姿を見た時、一瞬、そう一瞬だけ、綱吉を恨んだ。
否、こんな形でしか、止められなかった自分を恨んだ。

だが、自分で導いたことだ。これは、自分にとっても、彼らにとっても、喜ばしいことにはかわりなかった。
だから、その気持ちを全部押し込んで、あの時はすべてを忘れて喜んだ。

でも、やはり時間がたつと駄目だ。


正一はアジトの廊下でスーツケースを引きずりながらため息をついた。
つい先程まで、同盟マフィアとの交渉のために4泊5日の出張にでていた。
今はその帰りだ。
もともと体力があるほうではないため疲労はかなりたまっていた。
余計なことを考える前に早く寝てしまおう。
その前に綱吉に報告にいかなくてはいけない。

そんなことをぼんやりと考えながら、自室の扉をあけた時だった。




「おかえり、正チャン」




…自分の耳を、疑った。
恐る恐る顔をあげれば、懐かしいあの顔。
ソファーに腰掛け、ニコニコ笑いながら好物のマシュマロを頬張る、あの姿。


「…白蘭、さん?」


「あはは正チャン、面白い顔してるよ」


白蘭はこんな顔と言いながら、マシュマロをふにっと軽く潰した。

疲れているのだろうか。
疲れていて、こんな幻覚でしかあり得ないものを見ている?
または誰かのイタズラ?
ボンゴレにはふざけた術師が3人もいるからその可能性はかなり高い。


それにしても、質が悪すぎる。


「いい加減にしてくれ。僕は疲れてるんだ」

「お疲れさま、少し横になる?」

「いい加減にしろって言ってるだろ!!」


ガンッと勢いよく部屋の壁を殴り付けた。
手がじんじんと痛む。
それよりも、胃が、痛くてたまらなかった。

質が悪すぎる、こんな仕打ちあっただろうか。

白蘭の記憶がある人達は皆共に戦った仲間だ。
少なくとも、こんなひどいイタズラなんてできないくらいの関係だとは思っていた。

酷すぎる、最悪だ、早く消してくれ。



「正チャン」



いつの間にか、それは正一の目の前に立っていた。
懐かしいあの香りに目が熱くなる。


「……なん、で?」


ポツリと、正一は呟いた。
幻覚じゃない。理由はないけど。
でもどうして?
なんで?
どうやって?
わからないよ。

でもひとつだけ、わかるのは…





貴方が本物だということ。







「おかえり、正チャン」









第一話 おしまい


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