ナイトレイ&ヤシロ


ヤシロ×ナイトレイ要素注意








昔、一度だけ、なんでこんなに献身的に世話をしてくれるのか、聞いたことがある。
そのときヤシロはただ、“あなたが困っていたから助けただけですよ”と言った。
昔はそれを疑った。
しかし今は、そうであればいいと思う。







「すみませんでした」

小さく、ヤシロは言った。
ナイトレイはヤシロに見向きもせず、煙草をふかす。

ヤシロはナイトレイ達を利用した。
最終的には助けてくれたが、その事実は変わらない。
このことはナイトレイしか知らないし、ナイトレイ自身もこのことについてヤシロを責める気はない。
では何故、こんな態度をとるかといえば、完全に、ただの八つ当たりだった。

ヤシロはきっと、ナイトレイのことをなんでも知っているだろう。
しかし、ナイトレイはヤシロのことを何も知らない。
知ろうとしなかった。

自分のことで精一杯で、ヤシロが助けてくれるのが当たり前になっていた。

そんな自分が腹立たしい。

「あの…」

「あ?」

恐る恐るかけられた声に無愛想に返事をする。
ほら、またやってしまった。
自分はヤシロに甘えているのだ。

「怒ってます…よねぇ」

「……怒ってねぇ」

「またまたぁ」

ふざけた口調で言うが、内心かなり不安がってるだろう。
お前はいつもそうやって隠す。

イラつきはつもるばかり。
あぁ、どうしてこう上手くいかない。

「ナイトレイさ…」

「ヤシロ」

滅多によばない名前。
ヤシロがナイトレイをよぼうとするのを、ナイトレイは遮った。
驚き、身構えるヤシロをナイトレイは一瞥すると、すぐに視線をそらす。
煙草を灰皿に押し付けて、気まずそうに灰殻を弄る。

「ナイトレイさん?」

「……」

「おーい」

「…あ、のだな」

か細い声。
頭の中では次の一言候補たちが渦を巻いていた。

素直に、乞えばいいだけなのに。

プライドが邪魔をして言葉がでない。
長い沈黙。
二人は微動だにせずこの辛い沈黙を感じていた。


「え、えと…あの、ぼ、ボクもう帰るッス!また!」


ナイトレイはよほど険悪な顔をしていたのだろう。
気まずい空気に、ついにヤシロが逃げ出した。

しかし、ナイトレイはもう覚悟を決めていた。
ここまできたら逃がす訳にはいかない。


「待て、コラ!!」

「ひっ!!」


がしっと腕を掴む。
ヤシロの肩がビクリと揺れた。


「話せ!!」

「はな…?……えっと…何を…?」

「だからだな!お、お前の…ことを……は…」


語尾がだんだんと弱々しくなる。
ここまで言って、一気に羞恥が込み上げた。

顔が熱い。


「……ナイトレイさん」

「……っ!な、なんでもない!忘れろ!」


ぶっきらぼうに掴んでいたヤシロの腕を離し、外方を向く。

なんて恥ずかしい。

何も知らなかったのが嫌だった。
しかし、冷静に考えれば、ヤシロは別に自分のものという訳ではない。
それなのに、こんな、嫉妬染みたことを思うなんて…まるで…。


「ナイトレイさん、ボクのこと知りたいんスか?」

「……っ!!い、言うな!ちげぇ!勘違いすんなばか!!」


今まで生きてきた中で、一番恥ずかしい瞬間かもしれない。そう思った。
ヤシロはナイトレイの顔をのぞきこむ。
こんな顔、見られたくなかった。


「イイッスよ。じゃ、長くなるんで美味しいオレンジジュースでもいれてください」


満面の笑みで言うヤシロ。
ナイトレイはその顔を、横目で見ながらため息をついた。





あぁ、なんて恥ずかしい。

ヤシロのことをもっと知りたいと思うなんて。

助けてくれるのが、自分のためだけであればいいと願うなんて。



こいつが、俺のことを好きならいいのになんて思うなんて。








end



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あとがき

は、恥ずかしい!!
今まで書いたなかで一番恥ずかしいです、最後の恥ずかしいっていうの完全に自分の気持ちかもしれない、恥ずかしい!!←
ナイトレイがデレると、こんなに恥ずかしいとは思っていませんでした。笑
投票ありがとうございました!


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