ジン&ヴァーチャー





何度、会ったこともない彼を恨んだかわからない。



「よう」

「……?」


突如声をかけられ、ジンは目を丸くした。


「…マ…スター…?」


切り揃えられた白に近い銀髪に、深海を連想させる蒼い瞳。纏う雰囲気、声。すべてがジンの思い浮かべる彼そのものだった。

しかし、ふとよぎる違和感。何かが違う。


「………アベル…ヴァーチャー……」


無意識に呟いた言葉に、自分自身で驚いた。
そんな訳がない。だって彼は…


「正解!俺ら瓜二つなのによくわかったね」

「(夢?)」


ジンは眉を潜めて辺りを見渡した。
アベル=ヴァーチャーが生きている訳がない。
これはきっと夢だ。そうとしか思えない。
きっと、悪い夢。


「どう?あっちの“アベル”は元気?」

「……まぁ……」

「そっか。あの人なぁんか不健康そうだったから心配してたんだよねぇ」


楽しそうに笑うアベルに、ジンは視線をむけられなかった。
ジンが生まれたときに、アベルはもう死んでいた。
故にジンはこのアベルに出会ったことはない。
しかし、先日の出来事のおかげで、このアベル=ヴァーチャーという人間をよく知ることとなった。

アベル=ヴァーチャーは自分のモデルであり、ジンを産み出したアベル、そしてナイトレイの大切な人。


「あ、ねぇ。カインは?」

「!」


何故か心臓が爆発しそうだった。


「カイン…」

「そう、レベッカ=カイン=ナイトレイ」

「元気、ですよ」

「そう!よかった、あいつ…」

「元気です」


ジンはアベルの言葉を遮るように言い直した。
アベルは若干驚いたような顔を見せる。

「マス……か、カインさんは、元気、です。毎日、楽しそうに…友人と暮らしてます。…毎日、楽しく…」


ジンの頭の中は真っ白だった。


何度恨んだかわからない。
会ったこともない彼を
自分のモデルである彼を
アベルの、ナイトレイの、
大切な人である彼を


「楽しそうなら、よかった」


アベルはジンの頭を軽くポンッと叩いていった。


「あいつらのこと、よろしくね」


何度恨んだかわからない。

何度、うらんだか

何度、“羨んだか”


ジンが顔をあげたとき、アベル=ヴァーチャーはもうそこにはいなかった。





おわり。



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なんだか意味がわからないお話になってしまってすみません…!
とりあえず、ジンがヴァーチャーに抱く感情は複雑なんだよ、って話にしようとしたら、話がまとまりませんでした←
また本編で書きます…。
とりあえず、模倣作はオリジナルに憧れるって話でした。
リクエストありがとうございました!


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