雨がくれた運命

好きだなんて言葉に出してしまえば


どうなるかなんて分かりきっていた


だって、あの人は美しいものが好きで


私は美しくないのだから・・・





++++++





「いや・・別に悠は醜くくはないと思うぜ」


「無理しなくていいよ。自分で良くわかってるから」


「いや、本当だって!!ただ、弓親のタイプではないな・・」





茶屋で目の前の席に座っている一角は気まずそうに視線を反らしながら言った


わかってますよ、私が美しくないなんてこと


だからこんなに悩んでるのだ


綾瀬川さんは美しいものが好きで、醜いものが大嫌い


だから、美しくない私は彼に近づくことも、話しかけることもできないからただ見ているだけ


それも意外と悲しいもので、何回も胸が締め付けられそうになった


だって、話すこともできないなんて悲しすぎるでしょ





「結構辛いね。見てるだけっていうのも」


「話してみればいいじゃねェか。友達くらいにはなれんだろ?」


「あのねェ、友達以上にはなれないって分かってるのに、近づくなんてできないよ。私そんなに強くないから」





叶わない想いを隠しながら普通の顔で綾瀬川の近くにいれる自信がない


きっと・・いや、絶対に自分の気持ちを押さえられなくなるに決まってる


明らかに沈んでる様子の私に一角はうーんと頭を悩ませていた


一角は結構前からの知り合いで仲良くしているため、何回も相談にのってもらったりしている


勿論、綾瀬川さんのことも





「悠は絶対に弓親のタイプじゃないんだからよ、諦めたらいいんじゃね?」


「ホントに簡単に言うよねェ」





あんだけ唸りながら考え付いた答えが諦めろって


諦めるのが一番いいんだろうけどね、それができたら苦労はしてない


まあ、一角に恋愛相談してる時点でどうにもならないってことは分かりきってた


だって十一番隊だもの





「なんか、一角と話してると馬鹿らしくなってくるわ」


「んだと!?せっかく相談にのってやってんのによ」


「はいはい、ありがとね」





一角を軽くあしらい席を立つ


こうしていても何か解決するわけでもない


結局は一角に不満を聞いてもらってるだけなんだから


自分の分のお金をテーブルに置いて席を離れた





「なんだ、もう行くのか?」


「そろそろ仕事行かなくちゃ」





バイバイと手を振り店を出た



「別に悠は醜くはないぜ?でも、弓親のタイプではないなァ」





一角に言われた言葉を思い出す


醜くはないが、綾瀬川さんのタイプではない


それは醜いと言われるよりも私の胸に突き刺さった気がした


綾瀬川さんは美しいものが好きで、醜いものが大嫌いだってことは知ってる


だからって諦めることもできない


でも、今の状態が一番辛いってことも充分わかってる





「あ、雨だ」





ぽつぽつと降りだした雨がだんだんと激しくなってきた


そういえば今日は雨が降るとか言ってた気がする


でも、傘を持っていない私はその激しい雨に濡れながら歩いた


冷たいな・・・


でも、今はこれくらいが丁度いいのかもしれない





ガシッ





「えっ・・・?」





いきなり腕を掴まれて驚いて振り向けばそこには息を切らした綾瀬川さん


何が起こっているのか分からずに目を見開いた






「何して・・・」


「・・・え・・・?」


「何、してんの。ずぶ濡れだよ」


「あ、傘を忘れてしまって」


「ハァ・・良かった」





何で・・・・?


未だに私は放心状態で固まっていた


綾瀬川さんが掴んでいる右腕が熱を持っているよいに熱くて、雨に濡れていることを忘れてしまいそうになる





「おい、弓親!!」





綾瀬川さんの後ろから一角が走って来るのが見えた





「いきなりどうした・・って、悠!?」


「はぁ、何で一角まで来るんだよ」


「何でって、お前がいきなり走り出すから。いったいどういうことだよ」


「だって、雨の中傘もささないで歩いてるのが見えたから」





そう言って私を見る綾瀬川さん


え、私・・・?


言葉がでないで目をぱちくりさせる





「はあ!?悠を見つけてわざわざ走ったってことかよ!!」


「そうだよ。悪い?」


「マジかよ・・・」





綾瀬川さんの言葉に目を丸める一角


だけど、それ以上に私の方がびっくりしている


ずっと近寄れなかった存在の人物が今、目の前にいて私を追って来てくれただなんて・・





「お前、美しいもんが好きだったんじゃねェか」


「あのねぇ・・僕だって好きな子のタイプくらいあるよ。それにね・・・」





最後の方は小さくてよく聞こえなかったけど、そう言って私を見る綾瀬川さんに私は思考が停止してしまいそうになった


だって、今・・・





「僕、悠が好きなんだ。返事もらえるかな」





私の頬に雨とは別の何かが流れた


それが涙だと分かると次々と溢れだし止められなくなった





「嘘・・ですか・・?」


「嘘じゃないよ。本気」


「私も好きでした。でも、一角が私は綾瀬川さんのタイプじゃないっていうから諦めようと思ってたところで・・」


「・・・・一角」


「いや、だってよ・・!!」






慌てる一角に綾瀬川さんはため息を吐いて私見る綾瀬川さん


目が合っていることがすごく嬉しかった





「僕は美しいと思ってるよ。悠のこと」


「あ、ありがとうございます」





今まで言われたことなんて一度もなかったその言葉に照れ臭くなった


でも、大好きな人に言われたその一言はどんな誉め言葉よりも嬉しくて私は自然と笑顔になる





「それにね、悠は誰よりも美しいから」





雨がくれた運命

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