聖闘士星矢 | ナノ

Origin.


真黒一色


「どういうことだい?」


ありとあらゆる女性が赤面してしまうほどの美しい微笑み。
まさに今、その表情を携えているのはアイオロスその人であった。
そして、それを受けているナマエは、赤面するわけでもなく、動揺しているわけでもなく、脅えた表情を浮かべている。


「っ、」
「ねえナマエ?」
「!、」
「どういうことか、説明してもらおうか?」


決して2人の間に甘い雰囲気など無い。
微かに震えるナマエの体は、揺れる瞳は、ただ恐怖心だけを映していた。


「ナマエ。」
「ッ、」
「私はなんて君に言っただろう?」
「そ、れはっ……、」
「何度念を押したんだったかな?」


アイオロスの大きく太い手がナマエの頬に当てられる。
瞬間、ビクッとナマエの体は反射的に震えあがった。
それを見てアイオロスは酷く満足そうに唇を歪める。

だが、いっこうに瞳の色は変化を見せなかった。
光のないただ一色のそれは恐れ涙するナマエの表情だけを映している。


「ろ、ロス……ご、ごめっ、ごめんなさ…!」
「謝罪はいいんだ。…で?私はなんと、君に言付して出かけたんだったかな?」
「っ……か、勝手に、…部屋を出ないように…」
「そう。外出は禁じたはずだ。それなのに君ときたら……」


頬に当てられていた手が、ゆっくりと下がっていく。顔の輪郭をなぞるように下へと。
顎まで到達すると、アイオロスは指先でナマエの顔をあげる。


「約束を破るなんて、悪い子だ。」


冷たい瞳がナマエを見下す。


「ッ――ご、ごめっ、ごめんなさっ、ごめんなさいロス!」
「許せないんだよ。私のモノである君が、私だけの視界に常にいないことが。」


だから、


「だから他の奴らに見せないためにここに置いているというのに、まったく。」
「でっ、…でも、私、誰にも会ってません!!」
「ナマエ、君が誰もその瞳に映してなくても、遠くから君を見た人間はいるかもしれないだろう? 君の姿を、顔を、どんなに小さくても君のその影を見たものが。」
「それは……、」
「許せないんだよ、私はそれが許せない。」
「うっ?!」


喉にアイオロスの指が強く押し付けられる。
ただの一般人であるナマエにとっては、それだけでも息苦しく、痛みを感じるものだった。
その衝撃に、当然の如く表情も歪む。


「いい顔だ。……その顔もまた、私だけのものなんだ。」
「ろ…すっ……」
「声も、全部、全部……分かるだろう?」
「…っ……!」


いつからこうなってしまったのだろう。
昔はあんなにも優しく、まるで太陽のような温かさを持った人だったのに。

ナマエの瞳から涙がこぼれた。
それをアイオロスは目を細くして見つめる。


「何に対して、泣いているんだろうね。」
「ろ、すっ……!」
「私のこと以外で涙を流すのは許さないよ。」


喉に当てられていた指が、涙を拭き取る。
その動作があまりにも優しいもので、また涙が静かに流れた。


「あぁ、…せっかく拭ったのにまた涙を流すのかい? 何がそんなに悲しいんだい。
私がこんなにも傍にいて、ナマエ……君のことだけを一途に想っているというのに。」


悲しむことなど、なに1つないのに。


「……、私は、……私はいつまでここにいればいいの?」
「いつまで? おかしなことを言うんだね。」


ずっとだよ。
ずっとずっとずっと、永遠にだ。


「私が死んだその時にはナマエ、君も私の後を追うんだ。」
「そんな……!」
「だからねナマエ。君は誰とも関わってはいけないんだ。
私の後をすぐに迷いなく追えるためにも誰もそれを阻止しないためにも万が一にも命が繋ぎとめられないためにも君は、……私の視界だけで生きていくんだ。」


私の世界でしか息することは許さないよ。


「私の可愛いナマエ……その瞳に映すのは私だけだ。
私以外は誰であろうと、…そう、例えアテナであろうと許しはしない。」
「ロスッ……!」
「そういえばもうこんな時間か。夕飯を食べなくてはならないね。」


――あぁ、そうだ。


「夕飯の前にお仕置きをしなくてはならないね。私との約束を破った罰は、その身に受けてもらうよ。
もう二度と、こんな過ちを起こさないように深く刻み込んであげなくては。」



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黒系とか、病み系とか、書きたいのに
上手く書けない。とりあえず代表格のロスで練習。

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