聖闘士星矢 | ナノ

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小さな背中に夢見る


「――……ごめんなさい。」


気まずそうに視線を逸らしながら、少年は小さな声を発した。
何に対して謝っているのかは、テーブルの上を見れば一目瞭然だった。


「ナマエさんの大切にしていた花……、」
「…凍ってる、ね。」
「……ごめんなさい。」


何かと忙しい毎日。
少しでも心の安らぎがあればと育て始めた花々。
いつしか1つの趣味と化した育成。

数日前から満開に花開いた柔らかな桃色の弁。
それが今は、半透明な氷によって固まり、色も濁りを見せていた。


「……、仕方がないわ。」
「……。」
「そう落ち込まないで、カミュ。貴方のせいじゃないんだから。」


しゅん、と珍しく項垂れているカミュをナマエは宥めるように撫でる。


「けれどこれはナマエさんが毎日世話してたもので。
それなのに私はそんな大切な花を、……。」


制御できない小宇宙のせいで。
次第に小さくなっていく声に、ナマエは眉を下げた。


「お花なんてまだまだあるもの。
それよりカミュ、以前より小宇宙が高まったんじゃない?」


前は花弁の先しか凍らせられなかったのに。
冷たいそれに触れて、彼に微笑みかけた。


「……ただ制御できなかっただけです。」


それに、とカミュは下を向いたまま言葉を紡ぐ。


「色も半透明……まだまだ、未熟者の証拠です。」
「そうね。確かに決して美しいとは言い難いわ。
けれどこれは更なる凍気を身につければ改善されるものよ。」
「……そう、でしょうか。」
「そうよ。私が言うのだから間違いないわ。」


微笑んでやれば、カミュの口角も微かながらに緩んだ。
それを見てナマエは目を細める。


「さぁ、新しいお花を摘みに裏庭に行きましょう。カミュも手伝ってくれる?」
「もちろんです。」
「ありがとう。」


歩きながら、掌をかざして凍気を操る練習をしているカミュ。
彼の小宇宙は出会ったころよりも格段に増している。
後はいかにそれを自分のものにできるかだけだ。

そろそろ、時期なのかもしれない。


「カミュ。」
「?、はい。」
「明日、教皇様に私から申請するわ。」


突然の言葉に、カミュは足を止めて小首を傾げた。
長い赤色の髪が肩からふさっと落ちる。


「来週から東シベリアに発つ、と。」
「!、では私も遂に本格的な修行に?」
「えぇ。今の貴方ならあの極寒の地でもやっていけるはずよ。」
「はいっ!」


自然と緩んだ表情を慌てて引き締めて、カミュは大きく頷いた。

帰還した時には、黄金聖衣を纏うに相応しい聖闘士になっているはず。
ナマエは小さな背中を見つめながら、その未来に思いを馳せた。



.
そんな幼少期カミュ。
…も、いいんじゃないかなって。

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