聖闘士星矢 | ナノ

Origin.


風邪引きお嬢さん



「入んぞー。」
「入るな蟹。」
「はいはい。」
「入ってくんなって言っただろうが蟹。煮るぞ、焼くぞ、殺すぞ。」
「全部同じだっつーの。
はー……アフロディーテに聞いた時はまさかと思ったが、本当に風邪ひいたのか、お前。」
「うっさい。」
「けど口は相変わらずだなっ……と!」
「座んな、来んな、近寄んな、汚らわしい。」
「お前、さすがにそれはねーだろ!
ったく、せっかく見舞いに来てやったんだぜ? もうちょっと嬉しそうにしろよ。」
「頼んでない。」
「……あっそ。」


はぁ、とデスマスクは溜め息を吐いた。
そして、ベッドの中に沈んでいるナマエを見る。

いつもは負けん気が強くで黄金聖闘士に対しても屈しない彼女が、今日はダウンしている。
教皇宮での執務の帰り道、アフロディーテと偶々出くわして最初に言われた言葉が、
「ナマエが風邪をひいて寝込んでいるそうだ。」――だった。

それを聞いた時には嘘だと思った。
ちょっと喧嘩してアイツが飛び出したとき、一日雨にうたれても風邪ひかず。
ちょっと喧嘩してアイツを誤って湖に落としてしまったときも、風邪はひかず。
そんな強靭な体を持ったナマエがまさか風邪をひくなんて想像もしていなかったからだ。


「あれだな、馬鹿は風邪ひかないっつーのはただの嘘っぱちってことだ。」
「死ね蟹。」
「ってぇ……! お前な、少しは病人らしくしろっつーの!」


病人とは思えないほどキレのある動きでティッシュ箱を投げつけられたが、正直痛くも痒くもない。
けどほら、よく痛くなくても「痛い」って言うもんだろ? 今のはそれとおんなじ現象だ。
つーか。……よくよく見るとあれだな。


「お前、……。」
「なに。」
「………………………。」
「…………。」
「いやらしいな。」
「死ねッ!!」
「あじゃぱっ!」


だってそうだろう?
いつもは強気を見せているナマエが、今は弱った様子だぜ?
まぁ口だけは相も変わらずだが……。

瞼はだるそうに伏せられ、眼は潤み、
寒さで体は小刻みに震え、頬は赤らみ、
唇は濡れ、そこから熱い吐息が溢れ。


「うん、やっぱやらしいぞお前。」
「帰れ。即刻帰れ。」
「誰が。」
「お前だよ!!」


はぁ、はぁ、と息を切らしてナマエが片腕を自らの額に当てた。
そして横目でこちらを睨むようにして見てくる。


「……見舞いに来たと言ったからには、何かしらあるんだろうな。」
「なんだよ、ナマエ様はよくばりだな。俺が来たのに見舞い品が必要なのか。」
「お前が来たから見舞い品が必要なんだ。」
「はいはい……。」


それでもコイツの頬は何処となく緩んでいる。
そんなことを言えば「熱のせいだ!」などと言うので言わない。


「ま、軽く料理でも作ってやるよ。」
「……喉通りが良いもの。」
「はいはい。仰せのままに、お嬢様。」
「死ね蟹。」
「はいはい。」


なんど暴言で叩かれても、やっぱ放っとけねーわ、コイツのこと。
だってよ、コイツの瞳、柄にもなく嬉しそうにしてんだぜ?


「早くしろ蟹。」
「ったく注文が多いお嬢様だ。」
「ぱっぱと、しろ。」
「分かったっての。おら、だから少しでも休んどけ。」
「……ん、」


瞼を伏せるナマエ。
あぁ、やっぱ今日のコイツやらしいなァ。
なんて思いながらも、しっかり理性は押さえ込んで台所へ向かう。


「……はやく、こいよ。」
「…………あぁ。」


とりあえず治ったら何か見返りでも求めようか。



.
とりあえずこのヒロイン可愛いと思うの私だけか?
それにしてもデスマスクの言われよう(笑)

会話onlyのやけに長いおまけ→

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