聖闘士星矢 | ナノ

Origin.



最近の俺はどうかしていると思う。
それは俺の勘違いなどではなく、兄であるアイオロスにも言われたばかりだ。
そして今日も俺はいつもの場所に、早く行きたいという気持ちを抑えながら、されども行ってはいけないという気持ちをも持ちながら向かった。


「アイオリア様、アイオリア様?」
「っあ……な、なんだ?」
「どうかなさいましたか?」


もしや体調が……?
目の前にいる仮面を付けた聖闘士が俺の額に手を当てた。
ぴくりと反射的に体が跳ねるも、目の前のナマエは気にすることなく自らの額にも手を当てて小首を傾げている。
果たしていつの間にこの場所に来たのか、自宮を出たときから記憶が欠けていた。


「あ、あの……大丈夫、だから……。」
「っす、すみません! 私ったらアイオリア様に気易く!」
「いや、そういうわけじゃ!」


ついついナマエから身を引いてしまった。
彼女ははっと手を離し、頭を垂れる。
違う、そうさせたいわけではなかったのだが……。

ナマエはこの聖域で生まれ育った女聖闘士。
その実力は、同じ女性である魔鈴やシャイナにも劣らず、共にこの聖域とアテナを護る聖闘士だ。
たまたま彼女が1人修行をしているのを見たのをきっかけに、毎日、彼女に修行をつけている。

そう、はじめはただ同じ聖闘士として修行をつけようという考えだったのだ。
しかし、それも長き年月が経つにつれて俺は――。


「アイオリア様、やはり今日のところは……。」
「いや、問題ない。さ、始めよう。」


俺の身を案じながらもナマエは小さく頷くと、低い体制をとって構えた。
相手の一瞬の隙を見逃すまいとする姿勢が伺える。


「ナマエよ、様子を見るだけでは進まんぞ!」


今日は普段とやり方を変えて、アイオリア自ら仕掛けてみせた。
もちろん、ナマエが対応できるであろうスピードでだ。


「はっ……たぁっ!」
「ん、今のはなかなか良い一撃だ。」


ありがとうございます、と堅い口調でナマエから言葉が返ってくる。
彼女は俺が思っていたよりも日に日に成長を遂げているようだ。
今の拳もこのアイオリアの動きを見て放ったもの。


「少しスピードをあげるぞ!」


つい、その先をみたいと思ってしまった。
ナマエは日に日に変わっていく。
聖闘士としての実力はもちろんのこと、その内面すら力強く暖かな小宇宙が燃え盛っていくように。
そして、ナマエが変わっていくように、俺の中にある気持ちも変化を遂げていた。


「っく、…ぅっ……!」
「ナマエ、君はいつまで……。」


――君はいつまで美しくなるのだ。
このアイオリアの心を、いつまで……。


「っ、きゃぁああッ!?」
「しまっ……!」


意識がどこか疎かになり、力の加減に失敗した。
ナマエの体は軽々と後方へ吹っ飛び、大きな岩に激突。
うつ伏せの状態で地面に倒れ込んでしまった。
慌ててナマエに駆け寄り、その体を起こした俺は、瞬時に固まった。


「な……!」


息を、呑んだ。


「ん……あい、おりあさま?」
「っ……ナマエ……。」


弱々しく瞼を開けば、虚ろな瞳に俺の姿が映し出される。
数回、ゆったりとした動作でナマエは瞬きをすると、やっと気づいたのか目を見開いた。


「な、あ、あ……!」


途端に落ち着きをなくし、すぐさま自らの両掌で顔を隠しだす。
普段より彼女の顔を隠していた仮面が、先ほどの衝撃で外れてしまったのだ。
仮面の下の素顔を見られた女聖闘士は、その見た相手を殺すか。
もしくは――。


「ナマエ……。」
「あ…あぁ……。」


ナマエに優しく声をかければ、彼女は涙した。
俺はそんな彼女の髪を撫でる。微かに、体が震えていた。


「どうか、もう一度見せてはくれないだろうか?」
「っ……!」


ふるふる、と顔を隠したままナマエは首を振る。
当然の反応だ。だが、だが俺は。


「……ナマエ。」
「ゃっ…あ、アイオリア様、私は、……。」


ナマエの戸惑った声が小さいながらも俺の耳に響いた。
とくん、と胸が高鳴る。
まるで今のナマエは、この獅子に食われようとしているか弱き小動物のようだ。

食べたい。
無性にそんな気持ちになった。
このふるふると震えているナマエの顔を見たい。
きっと瞳は涙で潤んでいるのだろう。
もしかしたら怯えた表情を浮かべているのかもしれない。


「ナマエ、俺は殺されるつもりはない。」
「うっ……ぅうっ。」
「だから、ナマエ。俺を――……。」


そっとナマエの顔を覆い隠す手首を掴み避けた。
はっと目を開き、予想通りに潤んだ瞳がこちらを見上げている。
ああ。怯えてはいないようだ。
ほっとしたような、どこかがっかりしたような、そんな気持ちが俺の中に湧き起こる。


「きれいだ、とてもきれいだよナマエ。」


その頬に優しく撫でるように指を這わした。
ぴくっとナマエの体が跳ねる。
その様子さえも、ただ愛おしく感じる。


「ナマエ、俺を、……。」
「アイオリア、様……。」


頬に這わしていた指が下降していき、その唇に触れる。
男とは違う、女のふっくらとした唇。


「俺を、愛してはくれまいか?」
「……!」


驚愕で目も口も、だらしなく開いている。
俺はすぐにかぶりつきたい気持ちを抑え、少しでもナマエが安心できるようにと微笑んだ。


「そんな……だって……。」
「嫌か……?」


それもそうだ。好きでもない男を愛せなど。
だがナマエは予想だにしなかった反応を示した。


「だってそんな、迷惑でしょう? 私なんかがアイオリア様をあ、愛すなど……」
「そんなことはない。俺は、ナマエが愛してくれるのならば、俺も君を愛そう。
いや――俺はもう、君のことを、酷く愛しく想っているんだ。」
「そんな、嘘、嘘……です……!」
「嘘じゃない。好きだ、愛している。」


ナマエは瞳から涙をさらに零しながら口元を押さえた。
あぁ、もうだめだ。自分の中で、何かが切れた。


「私っ、私も――!?」
「……ナマエ。」
「んっ、……ふぁ…っ、ぁ…!」


全部言い切らせる前に、ナマエの唇へかぶりつくように己のを重ねた。
乾いた唇に舌を這わせ、何度も啄むように角度を変えて愛撫する。
ナマエはびくびくと体を震わせながら、ゆっくりと俺の腕をか弱い力で掴みだした。
それは決して拒絶をするものではなくて……。


「んぁ…っぁ、ん……。」


可愛い……。
俺は唇を離せば、ナマエの首筋に顔を埋めた。
ふんわりとした華麗な香りの中に混じる汗のニオイが、やけに厭らしい。


「ナマエ……。」
「アイオリア様……私、」
「いや、何も言うな。今はただ、……。」
「っぁ。」


ナマエの首筋に痕を残せば、その唇から漏れる甘い声。
俺の頭は麻痺されたかのように痺れた。


「ナマエ。」


そっとその細い腰を掌全体で愛でながら、唇に舌を這わせた。


「んんっ……。」


くぐもった声に、鼻から零れる息が俺を擽る。
唇はナマエに触れたまま、彼女の唇から小さな耳へと這わせ甘く噛みつく。


「ひぅっ!? ぁっ、アイ、オリア様!」
「ナマエ。」
「っ、…ぅん……ぁっ…!」


そのまま耳の中に舌を差し込めば、ナマエはぴくぴくと敏感に反応を示してくれる。
どうしようもなく、嬉しくなる。
ダメだと分かっていながらも、俺はゆっくりとその場にナマエを押し倒した。


「ナマエ……。」


目を瞑るナマエは、やはり草食動物のようだ。
ならば俺は――



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もうダメだ、なんだこれは。
エロにいくのは定めか……
けどアイオリアなら仮面云々の掟なんて気にしなさそうだなぁ

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