聖闘士星矢 | ナノ

Origin.



やっばい、もうすぐ待ち合わせの時間過ぎちゃいそう……!!
腕時計を見て思わず顔を引きつらせる。
そして早く変われ、早く変われと赤く光る信号を睨むように見つめる。


「変わった……!」


青になった瞬間に私は走り出す。
向かい風を感じながら、つい先日の出来事を思い出した。


『――え、スケジュール空いたの?!』
『えぇ。今度の週末にそちらに帰るの。ナマエの都合さえ良ければ会いたいなと思って。』
『私の予定なんて無理にでも空けるから大丈夫! じゃ、その日に会おうよ!』


電話越しに聞こえる昔からの友人の声にテンションが上がった。
彼女は城戸財閥のすべてを仕切っているお嬢様だ。
私が友人、と言うのも恐ろしいくらいの立場にいる相手ではあるが、向こうも同じように私のことを仲良く思ってくれている。
普段は海外で活動している身で、日本に帰省しても滅多に会えないほどの多忙人だが、今回は時間が取れたらしい。

そしてその日が今日なのだ。
それなのに部長にはやり直しくらわされるし、後輩にはコーヒー零されるしで酷い1日だった。
急いで書類の打ち直しをして、一時帰宅してもう1着のスーツに着替えたのだ。
お蔭でもう予定時刻を過ぎている。


「…っは…はぁっ……!」


元々運動が得意な方ではないからかすぐに息が切れてしまう。
それでもあともう少しで待ち合わせ場所のホテルだ。
……って、え?


「ナマエ様ですね?」
「は、はい。そうですけど……。」


ホテルの周りには黒いスーツに身を包んだイケメンが数人。
うひゃー、これってもしかして全員沙織の付き人?
思わず足を止めて凝視していると、私に気付いた1人がこちらへと近づいてきた。


「お話は聞いております。どうぞこちらへ。」
「は、はい……。」


うわ、本当にイケメンだわ。
顔立ち整いすぎじゃない? すらっとしすぎじゃない?
うっわー……。


「こちらのお部屋におりますので、私はこれで失礼します。」
「ありがとうございます……。」


美男に一礼をして、私は部屋をノックした。
すぐに扉が開かれて、ソファに座っていた沙織が立ち上がってこちらに微笑みを向けてくれる。


「ナマエ!」
「沙織! 久しぶり〜っ!!」


いつになっても沙織は綺麗だなぁ……!
さりげなく抱きついてナイスバディを満喫させてもらう。


「もうっ、ナマエは相変わらずですね。でも会えて良かった! 元気そうでなによりです。」
「さっきまで上司にこっぴどく怒られてたけどね。」
「あら。お仕事、大変なのですか?」
「うーん……まあ、ちょっとね。最近は上司の小言も多いし、その……。」
「? ……どうかしたのですか?」
「んとね……。」


沙織の優しい声に後押しされて、私は最近の出来事を言う。
実は隣に座っている先輩からセクハラを受けていること。
その先輩がまたしつこく、家にまで押し入ってくること。


「もうそろそろ警察呼びたいくらいだもの……。」
「ナマエ……。実は今回、貴女に話があって帰ってきたというのもあるの。」
「え?」


――……


「………。」


ぼーっとしながら流れゆく景色を見つめる。


『よかったら、私と一緒に来ませんか?』


沙織のその言葉だけが、頭の中を占めていた。
あれから彼女の持ち時間がなくなってしまい、帰らざるを得なくなった。

今乗っている車は、彼女のお付きの人が出してくれている。
綺麗なブルーの長髪が、黒いスーツに映えていて綺麗な男の人。


「……着いたぞ。」
「え……あ、ありがとうございます。」


あ、喋れたんだ。
どこからどうみても外国人だから、てっきり日本語話せないのかと思った。


「そうだ。これ。」
「え?」
「俺たちと来るなら、ここに連絡してくれ。」


彼に手渡された紙には綺麗な沙織の字で連絡先が書かれていた。
そしてその下にも、達筆な字で別の連絡先が書いてある。


「あ、下にあるのは俺の連絡先な!」
「え……。」
「俺はミロ。宜しく、ナマエちゃん!」
「……へ?」


ミロと名乗った美男さんは私にウインクを飛ばした。
うぉおい、イケメンのウインクが輝かしい。
というか、どうして彼の連絡先まで?
そしてなぜ私の名前を知っている……!


「ただナマエちゃんと仲良くなりたいなーって思っただけだったんだけど。……ダメ?」


運転席から顔を近づけられ、彼の綺麗な瞳が細められる。
待って、待て待て待て!


「だ、だだめじゃないっす……!!!」
「ぷっ……それじゃ、連絡待ってるわ。」


手をふらふらと振って、彼の乗った車は去っていった。


「ミロさん、か。……沙織と一緒に行ったら、彼もいるってことなのかな?」


家に帰ったら荷物を纏めて、大家さんのところへ行こう。



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