聖闘士星矢 | ナノ
時は静寂に包まれし頃。
処女宮の女官として身を置いているナマエは欠伸を1つ洩らしながら宮内を歩いていた。
就寝時刻であるから辺りは物音一つしない状態だ。
少し怖いと感じながらもナマエは一つの部屋へと入った。
「フドウ様……。」
「……ナマエですか。」
この宮を守護するフドウのもとへと。
ナマエは手にしていた毛布をそっとフドウの肩にかけた。
「今宵は冷えます故……。」
「私は問題ありません。それよりも、こんな夜中にどうしたのです?」
柔らかく断りながらもそれを受け入れるフドウに微笑み、ナマエは頭を下げた。
「はい……。目が冴えてしまいまして、眠れず。」
「困った女性(ひと)ですね……。」
「申し訳ありません。」
それでもお互いが笑みを携えているのか、この時が嬉しかったからなのかもしれない。
表向きには宮主と女官。されど2人は確かに想いあっているのだ。
他の聖闘士や女官もいる手前、公にすることもできず密やかな関係を築き上げてきた。
「ナマエ。」
「はい……。」
「酒を持ってきなさい。」
「寝酒、でございますか?」
「えぇ。」
フドウの言葉にナマエは再度頭を下げ、踵を返した。
その小さな背中に、フドウの声がかかる。
「あぁ、あともう1人分。」
「?」
「……貴女の分も、持ってきなさい。眠れないのでしょう? 今宵は私に付き合いなさい。」
フドウの携える笑みにつられるようにして、ナマエは少女さながらの満面の笑みで大きく頷いた。
そして宮内を駆ける。
「まったく。……彼女にはまいりましたね……。」
背中から伝わる微かな彼女の温もりに、フドウは薄らと瞼を開いて微笑んだ。
「――フドウ様、お持ちいたしました。」
「こちらへ来なさい、ナマエ。」
「? ……はい。」
盆を両手に持ったナマエを自分の隣に座らせると、フドウは満足げに手に取った杯を傾ける。
「今宵はさぞや月が綺麗なのでしょうね。」
「月、ですか……? 今晩は月を見ておりませんゆえに、私にはわかりませんが……。」
「貴女はまるで、月のようですよ。」
「え? ……は、はぁ。」
ナマエはフドウの言葉が何を意味しているか理解できず首を傾げてみせた。
そんな彼女の頭をフドウは2、3撫でると、再度酒に口付ける。
「朝はひっそりとしているのに、貴女は夜になると突然魅惑的になる。」
「み、魅惑的……ですか?」
「えぇ。まるで月の魔力がそうさせているみたいに……。」
フドウは彼女の髪を優しく一束掴むと、そこに唇を落とした。
ナマエは恥ずかしがり顔を俯ける。
「…あ、あの……。」
「さ、貴女も飲みなさい。」
「は、はい……。失礼します。」
フドウに施されて酒に口付けるナマエ。
珍しく薄く開かれた両の瞳からの視線に緊張しながらも、彼女はそれを飲み乾した。
「今宵はただ、私と貴女のための時間です。」
「……はい。」
「酒に溺れ、夜の刻に呑まれなさい。」
そして2人は体を寄せ合いながら杯を交わし続けた。
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電波系…になってるかな?(笑)